★初めての?ペペロン

 かなりの大雨で、今日の黒部峡谷行きは断念した。

 仕方がないので、魚津埋没林博物館とか魚津水族館とか黒部市吉田科学館とか、名前すら聞いたこともなかったし、こんなことでもなければ絶対と言っていいくらい一生行かなかったであろう施設を梯子することになった。
 それでもまあ、行ってみるとそれなりに楽しく過ごすことができ、朝の暗い気分はほぼ解消された。

 だが、ここに書きたいのは、おそらく初めて食べた正真正銘のペペロンチーノスパゲティのことである。

 ご承知の通り、ペペロンチーノというのは唐辛子のことで、通常はニンニクとともにオリーブオイルで加熱され、塩味で供される。
 もっともシンプルな料理で、いわば、イタリア版「素うどん」といったところだ。

 魚津駅前の素敵なログハウス風のイタリアンのお店で、メニューにある「ニンニクと唐辛子のスパゲティ」を注文した。だが、それが単なるペペロンだとは思っていなかった。
 なぜなら、家人が注文したジェノベーゼが880円、息子が注文した海老入りトマトソースのスパゲティが1220円で、「ニンニクと唐辛子のスパゲティ」も1220円だったからである。トマトも海老も使わない、もっともシンプルなパスタにしては値段が高すぎるので、おそらくは何か「具」が入っていると思っていたのだ。

Dsc04790_169 ところが、「アーリオ・オリオ・ペペロンチーノのかた」と言って私の前に供されたのは、紛れもなくその名の通り「ニンニク・オイル・唐辛子」のスパゲティであった。それ以外に入っていたのはパセリと塩くらいだと思われる。
 「こ、これが1220円?」とびっくりせざるを得なかった。いや、高級店でそれくらいの価格だというのならまあおかしくはない(のかな?)。だが、ジェノベーゼもトマトソースのスパゲティも880円なのである。息子のは、大ぶりの海老が入っていたからこその1220円なのだ。

 考えてみれば、素のペペロンを食べるのはおそらく生まれて初めてである。イタリアンのランチでは必ず何かしら具が入ったパスタが出されるし、自分から単品で何も入っていないスパゲティを注文したこともたぶんない。

 やはりというべきなのか、このペペロンはおいしかった。比較対象がないのでどこまで褒めていいのかわからないのだが、絶品と言ってもかまわないくらいなのではないかと思う。
 息子のトマトソースよりも家人のジェノベーゼよりもおいしかったのは間違いない。

 しかしながら、他のメニューとの比較で、「素のスパゲティが1220円・・・」という思いが残ることも否めなかった。
 「おそらくは最高級のオリーブオイルを使っているに違いない」「いや、ニンニクもそうかも」「そういえば、麺もジェノベーゼのとは違うような・・・」など、理屈で自分を納得させながら食べざるを得なかったのは、どうにも落ち着かなかった。

 アーリオ・オリオ・ペペロンチーノは、シンプルなだけにごまかしがきかず、調理人の腕が素直に表れるとかいう。そういう意味では、シェフの力量を信じていいのかもしれないが、それにしてはトマトソースもジェノベーゼもそれほどのことはないと感じた。

 セコンドの中にはビーフステーキというのがあって、「8000円より」と書いてあった。ここでそんなものを注文する人がどれくらいいるんだろう?
 もしかしたら、シェフのこだわりでものすごい肉を仕入れているのかもしれない。だとすると、腕の鳴る?ペペロンチーノの素材にも、やはり力が入っていたのだろうか。