●神も仏も・・・

 兵庫県の尼崎駅手前の列車脱線事故(2005.4.25)の追悼に際して、「列車に乗るとき、たいていは前の方の車両を避けている、変人めいた私でさえ、列車に乗っていて死を意識することは稀だ」と書いた。

 その後もなるべく、3両目4両目以降の車両に乗るようにしている。

 だが、スペイン北東部のサンティアゴ・デ・コンポステーラ手前で起こった列車脱線事故の映像を見ると、遠心力で外側に脱線した3両目・4両目こそがもっとも被害が大きいように見える。それより後ろの車両の壊れ方も激しい。
 一方で、先頭車両の運転士は事情聴取に応じられる程度のケガしかしていない。

 結局、高速で移動中は、どこに乗ろうと危険なことに変わりないのだろうか。
 いや、何も移動中でなくても、自宅の風呂や階段で死ぬ人は、交通事故死者より圧倒的に多い。

 2005年にも書いたが、まさに諸行無常を感じさせる。

 同時に、この事故の犠牲者の多くが、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼者/参拝者だったであろうことを考えると、やはりいつもの通り、神も仏もないのだという思いを新たにして、いっそう気が滅入る。

 私はもちろん、神や仏を信じていない。

 信じていないが、もし神や仏がいてくれたら、そしてそれを信じることができたら、われわれはどれほど幸せかといつも思う。