●「行くところがない」

 先週書いた「これから、あちこちが近くなる気がした」と矛盾するようだが、バイクを買ってもなかなか行くところがない。

 18歳で普通車の免許を取って車と原付に乗り始め、20歳で中型二輪の免許を取ってオンロードとオフロードのバイクを立て続けに買って以来、車を持っていなかった時期はあるものの(貧乏だったのだ)、とにかく何かしら動力のついた乗り物にはずっと乗っていた。

 そして、兵庫県南部と大阪府北部にしか住んだことがないので、そこから日帰りで行けるようなめぼしいところは既に行き尽くしてしまった。

 どこか私が行ったことのない、めぼしいところがあったら教えてほしい。
 かなり切実な願いである ^^;

 昨日は高野山に行った。むしろ、高野龍神スカイラインが目当てだ。
 龍神村まで行くと遠いので、護摩壇山までにしようと考えていた(龍神温泉に一泊して・・・というのもいいのだが、ひとりはやはり侘びしい)。

 ただ、レーダーエコーで見ると、和歌山から奈良の山間部にかけてかなりの雨が降っており、ほとんど移動もしていないようだったので、雨が降り出したら引き返そうと思っていた。

 案の定、雨が降り出し、護摩壇山まで10kmほどを残して引き返した。
 引き返してわりとすぐの駐車場で休憩していたが、やはりというか、雨は追いかけてこない。

 ベンチの上で横になっていると、爆音を轟かせながらハーレーがやってきた。私より年配に見える夫婦で、大雨の中をタンデム走行してきたらしい。カッパを脱いでいる。

 「ほら、もう降ってないし、晴れてきたって」
 「どこが晴れてきてんのよ?」
みたいな会話から、雨が降るからやめておこうという奥さんを嫌々付きあわせているのがよくわかった。
 まあ、付きあってくれるだけマシだということか。

 少し話したところによると、護摩壇山付近は文字通り土砂降りだし、霧で前が見えないほどのところも多かったという。

 私を次々と抜かして南へかっ飛んでいった連中が引き返してくる気配はなかったけど、どうしたんだろう。
 中にはTシャツ一枚みたいな軽装の奴もいた。
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 何度か(といっても2〜3度)行ったことがあるので、高野龍神スカイラインにもそれほどの感慨はない。
 だが、前回行ったのはたぶん10年ぐらい前だ。
 今地図を見ると、14年前に行った時のメモがあるが、もしかするとその時以来かもしれない。

 「行くところがない」というのは、常に「行ったことがない」ところに行きたいからで、10年以上も訪れていなくても、行きたいと思うような目的地にはならないのである。
 今回だって、仕方なく選んだ・・・感が強い。

 世に「リピーター」という人がいるが、羨ましいなと思う。

 何ごとでも、表面をさらっと撫でただけでまた次の新しいものごとを求めるような深みのない男には、深い楽しみもまた、ない。