●気温と蟬時雨

 六甲山上は相変わらず涼しかった。

 外気温計が示すのは26℃前後。ただ、下界が38℃でも32℃でも同じぐらいなのは解せなかった。
 昨日は後者だったので、もっと涼しいかと期待していたのだが・・・

 それより驚いたのは、盛大な蟬時雨。これがほんとうにヒグラシなのかと自問してしまうようなにぎやかさだった。車の窓を閉めてエアコンの風量を上げてみてもうるさいぐらいに聞こえてくる。こんなのは、ここに限らず初めての経験だ。
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 紅葉谷を下り始めても、ヒグラシは相変わらずだった。一生懸命歩いていると暑いが、立ち止まったり座って休憩したりすると、涼しい風が吹き抜けていく。時にちょっと冷たく感じるほど。

 それが、道が平坦になり、河原のようなところに出ると、ヒグラシの声が小さくなり、ミンミンゼミの声が混じりだした。夕刻に向かうのに、気温もやや高い。

 そしてまた、ロープウェイで山上へ上がると、気持ちのいい涼しさだ。ちょっと湿気は多いけれど。

 あれ、ヒグラシはどうだったっけ? 上に戻ってからのヒグラシの記憶がない。少なくとも、あの騒々しさはなかった。

 たぶん、蟬たちは、夕刻以降には鳴かなくなるのだろう。まっとうな気温の場所では