●人生かかってるんですよ・・・×2

 大相撲の野球賭博問題で、特別調査委員会の伊藤滋委員長が「琴光喜の処分? やるよぉ。一番のクビだよぉ」などと半ば楽しそうに記者会見で発言したことに絡み、大嶽親方(元関脇・貴闘力)がテレビのインタビューに応じて、「笑いながらクビだとか平気で言いますけど、みんな人生かかってるんですよ」と、大泣きしながら訴えていた。

 滂沱と流れる涙と鼻水、それを拭おうともしない姿がテレビ画面に大写し。

 悪いことをしたには違いない。だが、罪と罰のバランスが取れていないのではないかと思うことは確かにある。

 今回のことについてはよく知らないし、そのバランスは判断できないけれど、よく思うのは、エスカレータの下などからスカートの中を携帯で撮影したとか手鏡で覗き見したとかで、実名を報道されて懲戒免職になる公務員や教員のことだ。

 もちろん、恥ずべきことだし、許されることではない。

 だが、世間の晒し者になった上に職を失うということとのバランスが悪くはないだろうか。よくあるのは50代の人たちで、賃金だけではなく、数千万円の退職金も失うことになってしまう。
 まあ確かに自業自得には違いないのだが、冤罪もあるかもしれないし、たとえそうでなくても、行為の軽さと結果の重大さのバランスが悪すぎるように感じてしまうのだ。

 まあ、現状として重大な結果を招くことは知られているわけだから、それでも軽率な行動に走ってしまう自制心のない人たちには厳罰も仕方ないのかもしれない。

 大相撲の野球賭博問題の場合はどうなんだろう?
 ___

 もっと気になったのは、なんの落ち度もないパイロットの卵の方である。

 再建中の日本航空が「パイロットの候補生として採用した社員約130人に対し、地上勤務の総合職への職種変更を求めた」(yomiuri.co.jp)というのだ。
 つい先日まで、こうやって募集しておきながら(この基準だと、今の私の視力でも可能性がある。すごい時代になったものだ)。

 なんという残酷物語。

 (おそらくは)小さいころからずっと抱き続けた夢が、もっとも素晴らしい形で叶いつつある人たちに突きつけられた非情な現実。
 すでに訓練を始めて飛行機を飛ばしていても、もう操縦士になる道は閉ざされてしまうのだ。

 社内で訓練し、事業用操縦士の免許(技能証明)を取得済みの人たちですら、どうなるかわからない。

訓練機は操縦できるが旅客機の操縦資格を持たない155人に対しては、5〜7年間は新たな訓練を行わない。その間は、総合職として地上勤務となり、訓練再開を待つことになるという(同)。
 現在20代後半だとすると、うまくいっても副操縦士になれるのは30代半ばということになるだろうし、そもそもなれるかどうかがわからない。
 不安に押しつぶされそうになりながら、地上職のサラリーマンを勤めることになるのだろうか。

 パイロットが不足すると騒いでいたのがたった5年前。

 一寸先は闇とはいえ、候補者たちを襲った闇と絶望感の深さには、想像を絶するものがある。

 初めて真剣に、日本航空の再建が一日も早くなされるようにと祈った。