●子ども銀行

 先日、息子の高校入学手続き(入学金を振り込んだ証拠を見せるだけ)をした。その入学金が20万円。

 次の日、制服だの体操服だの制靴だの教科書だの参考書だのを一括で購入させられた。

 3万4万1万2万5万と(順序も金額もでたらめだが総額はそんな感じ)と支払いが続く。もはやお金を支払っているという感覚はない。
 強いていえば、ままごとなんかの「子ども銀行」で使うオモチャのお札を配っている気分になってきた。

 この後、80万ほどの学費の支払いが待っている(10回分割にしてもらった)。
 別に通学費もかかる。

 まあ、何とか払えるからいいようなものの、これでは私立への進学を諦めざるを得ない人もいるだろう。あるいは、諦めるまではいかなくても、そのために生活が苦しくなったり、それ以前に、学資の預金に心を砕いてきたりしたかもしれない。
 子どもが3人もいた日には目も当てられない。
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 イギリスを除き、ヨーロッパの多くの国では学費が無料かごく低額である。確か、現在、ドイツの大学では年間数万円の学費を取っていると思うが、そうなったのもごく2〜3年前のことで、それ以前は無料だったこともあり、有料にする際にけっこうな騒ぎになったと記憶している。

 ヨーロッパは税金が高いからだという人もいる。それも一理あるだろう。
 だが、例えば、日本のすべての国立大学に対して使われている税金の総額は、近年のトヨタ自動車1社の利益と同程度なのだと聞く(念のため、売り上げではなく「利益」です)。

 つまり、トヨタ1社が日本の国立大学をすべて運営しても赤字にはならないということだ。

 教育にかかるお金など、所詮その程度のものなのである。

 折しも、道路特定財源の話題がかまびすしい。そこで言われている金額は、10年分で、すべての国立大学を60年間運営できる金額に相当するそうだ。
 マッサージチェアを買ったとか温泉旅行に行ったとか、例によって無駄遣いを指摘されているが、その程度の無駄遣いなど、誤差にすらならないホコリ程度の金額なのである(弁護するつもりはないが)。
 無駄な橋トンネル、ダム、道路・・・ おそらくはその建設をやめるだけで、幼稚園から大学まで、全国すべての国公立学校の学費を無料にできるのではないだろうか。

 OECD加盟国の中で、最も教育にお金をかけない国の一つが日本である。

 言うまでもなく、個々人に莫大な学費負担を強いたり、保育所に入るのが難しかったりするなど、子育て支援策に乏しいことが少子化の一因ともなっている。

 言い古されたことだが、教育にお金をかけない(すなわち力を入れない)国家は衰退の道を辿る。
 過ちを改めるのに遅すぎることはない。今からでもいいから、教育にもっと税金を回して、安心して子どもに教育を与えられるようにして欲しい。
(そういえば、先日岡山県職員をプラットフォームから突き落とした少年は、学費が工面できなくて大学進学を諦めざるをえなかったと報道されている。たとえばフィンランド人が聞いたら何のことかわからないと言うだろう。)
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 さっそく来年からでも私学助成金を3倍ぐらいにしてくれないだろうか。そうすればうちの子の学費もぐっと安くなると思うのだが・・・