★皆既月食の日

 昼は友人と東風へ行って絶品ささめうどん(天ぷら付き)を食す。声の大きい女将さんが私のことを覚えてくださったらしく、「いつもどうもありがとうございます」に力が入っている。ちょっと嬉しい。

 友人の人生エンジョイ度はまだまだぐんぐん上昇中である。それで仕事も家族も破綻していないのだから大したものだ。とても真似はできない。

 夜は皆既月食。一面の曇りだったので、ちょっと遠出する予定を変更して、近所をぶらぶら散歩がてら観測しようということになる。

 だが、月はなかなか顔を出さない。雲が切れるのをじっと待っているのも・・・ということで、大学病院の最上階にあるレストランへ行って外を眺めながら食事することにした。
 双眼鏡をぶら下げて望遠鏡を担いで大学病院に入るのにはかなりの勇気を要する。息子が「ぼくが持とか」というが、望遠鏡がよけい大袈裟に見えそうだったので自分で持った。

 都会ではないしガラスは反射するしで、ここは夜景よりも昼間の眺めの方がみごとだ。

 食事を終えてロビーに出ると、微かに赤く見える月が出ていた。すでに皆既月食に入っているらしい。
 1階に降りてビルの外に出た。車椅子にパジャマ姿の入院患者とおぼしきおじさんが、ほらそこ、と教えてくれる。いつのまにか広範囲にわたって雲がなくなり、やっと見えるぐらいの月が東の空に上がっていた。
 目が暗さに慣れてくると、皆既月食特有の赤い月にはなったが、それでも記憶しているよりはずいぶん地味だ。空が明るすぎるからかと思っていたが、空気中にチリが多いせいでもあるらしい。

 ものの20分もしないうちに、また一面の雲。欠けていく、あるいは戻っていく様子は見られなかったが、まあ、まったく見られないよりはよかったと納得して家路につく。

 帰宅してからかなりたって、また見えてきたと家人の声。雲が大きく切れ、月はもう半分ぐらい姿をあらわしている。望遠鏡で見ると、月の一部を覆っているのが地球の影だというのが実感できる姿だ。

 それにしても、何月何日の何時何分から何時何分まで月食だなんて、どうやったら計算できるんだろう。きっと大したことじゃないのだろうとは思うのだが、それができるだけでもノーベル賞ぐらいあげてもいいような気がする。