■家族風呂禁止

 実は(というほどのことでもないのだが)、兵庫県出身だ。

 子どもとしてその狭い世界に育つと何とも思わず、これが日本だ(下手をするとこれが世界だ)と思うのだが、兵庫県というのは(たぶん、どの都道府県も多かれ少なかれ同じようなものだろうが)、ちょっとヘンなところである。特に警察とか役所関係がひどいように思う。

 スピード違反の取り締り、いわゆるネズミ捕りが非常に盛んだ(った)。しかも手段が姑息で、広い下り道の下の方に必死で隠れていたりする。
 以前書いたような気がするが、私が生涯でただ一度、ネズミ捕りに引っかかったのは、「中央分離帯のある」「片側2車線の」「下り坂」を時速53キロで走っていたときであった。制限速度が40キロだったのである。

 まあ、度の過ぎた低速規制が幅を利かせていたころではあった。その後、場所によっては緩和されたようだが、ほとんど誰も守らない現実離れした制限速度の設定を墨守しているのは未だ全国でも有数だと思う。

 阪神高速神戸線の制限速度は今でも60キロだが、ほとんどのクルマは100キロ近くで走っている。せめて80にすれば守るクルマも出てくると思うのだが、60では、ほぼ全員を犯罪者に、残りの少数を危険な邪魔者にするだけである。
 「北神戸線の制限速度は60キロです!!」と叫ぶ看板を林立させても、「テロ特別対策実施中」同様、単なる税金?の無駄遣いだ。

 姑息と言えば、踏切や一時停止のところで陰に隠れている警官も多かった。あるいは、指定方向外進行禁止の看板を曲がった先で待ち伏せしていたり。
 それも、あまり危険のない(したがって「違反者」が多くなる)ところに限って取り締まっているように見受けられた。こちらは幸い、検挙されたことはない(というか、違反したこともない)。

 兵庫県を中心に車を運転していたのは4年間。その間に無数の姑息な取り締まりを目撃した。それでほとんどまったく捕まらなかったのは、われながら立派だったと思う。

 大阪に来て20年余。この間、ネズミ捕りを目にしたのは数回。兵庫県で経験したようなひどいものは経験がないし、捕まったこともない。また、その他の姑息な取り締まりは見たことがない(「ない」とは思っていないが)。
 (後記:やはりありました。)

 問題は、兵庫県警ががんばって取り締まっていても、大阪と比べて事故や死傷者が少ないわけではないということだ。つまり、取り締まりの効果はないということである。
 わざわざ安全な場所を選んで?捕まえやすい人たちばかり捕まえているのだからそれも当然だろう。

 さて本題。

 兵庫県生活衛生課が、公衆浴場法基準条例を盾に、家族風呂の禁止を徹底し始めたというのである。これに反発しているのが「公営」の浴場だというのがおもしろい。
 貸し切り風呂に家族で入って、何が悪いというのだろうか。そういうのを男女混浴というか?

 「「『家族』には、事実婚夫婦別姓などさまざまなかたちがある。本当に家族なのかどうか確認が困難で、風紀を保てない」と判断」(asahi.com)したのだという。
 なるほど。
 本当に家族じゃないと、男女で貸し切り風呂に入ってはいけなくて、入ると風紀が乱れるのか・・・

 でも貸し切りなのだ。そんなことを言い出せば、あらゆる宿泊施設で家族じゃない男女が「混浴」している実態は風紀を乱さないのか。
 うーん、公衆宿泊施設と公衆浴場施設は違うのかなあ・・・ なんか一瞬説得されそうになるけれど、日本全国あちこちで、貸し切りの家族風呂に入ったぞ。兵庫県にしたって、「公営」の浴場が県の指導を無視して家族風呂の営業を続けている場合もあるという。

 やっぱり、兵庫県のお役所はちょっとヘンだと思うんだけど・・・

 こういう言い方をするのはちょっとアレだが、兵庫県に生まれ育った人が兵庫県の役人なんかになったりすると、自分のローカルな感覚をジャパニーズスタンダード(下手をするとグローバルスタンダード)だと思ってしまったりする場合もあるんだろうなという気がする。

 そのヘンな感覚に異議を唱えているのが同じ兵庫県人であるところが救いだけど。

(それにしても「風紀」って懐かしい言葉だなあ。久しぶりに聞いた。)