■競争社会

 今年の春、アメリカのイエローストーンに行くにはどの航空会社にするのがいいか考えていた。候補に挙がるのは、ユナイテッド、ノースウェスト、デルタなど。同じ会社または系列会社が目的地まで運行しているほうが安心できるような気がしたのだ。

 だが、以前利用したときのいい思い出があるユナイテッドは既に経営破綻していて再建中。残る2つはいつ破産するかわからない。いったい、どれを選べば夏になっても間違いなく飛ぶのだろうと思ってしばし悩んだ。
 決めかねているうち(といってもほんの10日ほど)に最安だったユナイテッドの切符はなくなり、結局ノースウェストにした。

 そのノースウェストに乗って1か月ほど、9月14日には予想通り経営破綻した。同日に、デルタも。これで、これまでに1度もつぶれていない大手はアメリカン航空だけになったのではないか?

 思えば、初めてアメリカへ行ったころにコンチネンタルとパンアメリカン(懐かしい! が、結局一度も乗れなかった)が破産したのを皮切りに、TWA(映画『アビエイター』(ディカプリオ)にも出てましたね)もUS航空もだめになった。USは、なんと、その後また破産している。

 今回のノースウェストとデルタの破綻は、元従業員への年金支払いや伝統的経営手法などの高コスト体質を背景に、原油高騰が追い打ちをかけ、ハリケーンカトリーナ」がとどめを刺したということらしい。

 だが、それとは別に、世界一の航空大国アメリカの空を支配するメガキャリアが、これほど次々と破産するのは、正常なことなのだろうかと思う。過度な競争社会や歪んだ競争社会がもたらす結果は、こういうわかりやすい形で私たちの目の前にあるのだ。

 それでも、そこに競争がある限り、それに勝ちたい資本家や労働者たちは、会社や体や心や家族を破綻させても引き続き競い合っていく。競争がグローバルになり、より苛酷になっても、この「定向進化」は止まらない。
 そして残るのは、競争で相手をひねりつぶしたり、合従連衡を繰り返したりした巨大会社が暴利を分け合う、悪い意味での「非」競争社会である(どこかの国のこれからの銀行みたいですね)。

 非力な一個人として、この先、どうすればいいのだろう? 日本や世界を憂うのはやめて、ごく利己的に自分と家族だけでもそこそこの生活ができることだけを考えるのが一番いいのか。

 ・・・たとえそう決めたとしても、競争からすっぱり足を洗うことはなかなかできないんだけれど。