■高齢化社会とエレベータ

 65歳以上の高齢者人口が2割に達したという。実に5人に1人ということになる。

 もっと恐ろしいのは、たった10年後には、4人に1人になると予想されていることだ。

 それはそれ。

 新幹線の駅。車椅子を老妻に押してもらっている夫が、エスカレータの前で降りる。杖にすがって何とか立ち、かろうじて歩を進める程度のことはできるらしい。押しのけるように前に入った男に続き、危なっかしくエスカレータに乗る。
 老婦人は夫の乗っていた車椅子を折りたたみ、やや苦労してそれを段の右側に乗せると、自身もエスカレータの一段下、左側に乗った。

 ほんの2〜3秒後、車椅子が落ちそうになり、それを支えようとした老婦人は後ろへ倒れそうになる。右側に置いた車椅子に手が行っていて、ベルトをつかんではいない。車椅子もろとも、後ろへ倒れるしかない状況だった。

 あのまま後ろへ倒れていれば、少なくとも大怪我は免れない。夫人は入院、夫は介護者を失って生活できなくなっただろう。あるいは、子ども夫婦に父母双方を介護する重圧がかかり、親子2つの家庭がともに崩壊したかもしれない。

 ・・・エスカレータで1人がよろめいたぐらいのことで。

 なぜか、こんなこともあろうかという気がして後ろについていたために、右手で車椅子を、左手で夫人を止めることができ、事なきを得た。

 珍しく、人ごととは思えなかった。
 移動を楽にするためだけではなく、危険を少なくするためにも、エレベータの設置を進めてほしいと切に思った。新幹線の駅だけではなく。