●「想定外」その3 ──「天皇陛下、生前退位の意向」

 まさか「その3」を書こうとは思っていなかった。

 家族で外食していたとき、何か調べようと思って iPhone を見ると、前に開いていたニュースアプリの画面が見えて、「天皇陛下生前退位の意向を示す」とあった。

 ええっ、まさか・・・と思ったが、NHK共同通信が出したニュースをハフィントンポストが報じているもので、情報源は確かだ。

 びっくりするとともに、「そんなことが可能なのか」という思いがすぐによぎった。

 ハフィントンポストの記事はほんの数行で、「NHKによると、江戸時代後期の光格天皇を最後に約200年間、譲位は行われておらず、実現すれば憲政史上初めてのことになる」で終わっており、現行の皇室典範でそれが可能かどうかにはひと言も触れていない。

 あわてて(何の関係もない一国民が慌てる必要なんてもちろんないんだけれど、心情としてはまさにそんな感じだった)皇室典範を調べてみた(便利な時代だ)。

 それでわかったのは、やはりというか、皇室典範生前退位や譲位などを想定していないということだ。
 「天皇が崩じたとき」以外に皇位継承は予定されていない。

 まあ、憲法九条の下で新しい安全保障法制なんかを作ってしまうような政府だし、テキトーに解釈を変更してできることにするのかなあとまず思った。

 が、引き続き皇室典範を読んでいると、ものすごいことに気づいてしまった。

 仮に、天皇が譲位すると、天皇は皇族ですらなくなるのだ! 条文を素直に読む限り。

 皇室典範の第五条で、「皇族」は、「皇后、太皇太后、皇太后親王親王妃内親王、王、王妃及び女王」のみになっている。
 これでは、どう解釈しても、退位した天皇は皇族にはなれない。そしてもちろん、もはや天皇ではない。

 だとすると、「ただのおじいさん(元天皇)」とせざるを得なくなる。

 皇室典範を隅から隅まで検索しても、「太上天皇」や「上皇」や(衆議院参議院以外の)「院」などという語は見つからない。
 もともと、生前譲位を想定していないのだから当然のことだ。

 となると、条文の趣旨や天皇の意向にはそぐわないけれど、やはり摂政を置くことになるのだろうか。

 そうではなく、本当に生前譲位を可能にするためには、皇室典範の改正しかないだろう。まあ、今上天皇の意向とあらば、そのくらいは大したことではないのかもしれないけれど。