● "Got it !" 考 ──Pokémon GO(ポケモン GO)を記念して
Pokémon GO(ポケモン GO)が日本でも利用可能になった。
これだけ騒ぎになっているものを、「いえ、知りません」というのもアレなので(そうか?)、ダウンロードして早速1匹捕まえたが、何が面白いのかわからない。
今日は山の中で試してみたが、周囲に一匹もいなかった。
(後記:夜のウォーキング中には3匹だけ捕まえた ^^;)
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さて、数日前のことだが、テレビのニュースでこの話題を扱っていて、海外の街の人が "Got it !" と喜んでいたのを、字幕で「ゲットしたわよ」と訳していた。
なるほど。"got" は「ゲットした」なのだ・・・
25年?前なら「ゲット」などという日本語はなかったと思うので、これでは訳したことにならなかったはずだ。それに、現在では「ゲット」は日本語になってしまっているが、「ゴット」は日本語になっていないのも面白い。
もう一つ、「わよ」って何だ?
"Got it !" をどうひねくり回しても「わよ」は出てこない。
これはもちろん、女性に特有の(とされる)終助詞で、発話者が女性であることを示すための、いわゆる「役割語」として使われている。
日本でも、今日は公園や街中で多くの女性たちが「ゲットした!」とか「ゲットォォォ!」とか言ったり思ったりしているかもしれないが、「(ゲットした)わよ」なんて言っている人はおそらく皆無であろう。
にもかかわらず、英語はわざわざそう訳されるのである。画面を見ればわかることだから、別に発話者が女性であることを強調する必要もないのに。
そもそも、「つかまえた!」ではダメなのだろうか。
さらにもう一つ、"it" が訳されていないのも面白い。英語でこの "it" を省略することは不可能だが、日本語にはいらないのだ。あるとむしろ不自然になる。
「英語は主語を省略できない」という言い方をされることも多いが、この例からもわかるように、主語が省略されることは稀ではない。むしろ、他動詞の目的語の方が省略されにくい(というか、省略される例が少なくともすぐには思い浮かばない)。
日本語だと、他動詞の目的語はほぼ自由に省略できるのに。
・・・"Got it !"(「ゲットしたわよ」)だけで、すぐにこれくらいのことがずらずら出てくる。
言語や文化の翻訳が困難なことに、あらためて思いを致さざるをえない。