★幸福の芳香

 樹齢?30年近い、「幸福の木」が6年ぶりに花をつけた。

 6年前、それまで一房だけだった花が2房出ていたときに驚いていたのだが、今回はなんと4房。夜になると、リビングは強烈な芳香に包まれ、息子なんかはドアを開けるなり「うわっ、くっさ!」と叫んでいる。
 いや、ほんとは甘い香りだし、質としてはそんなに悪くないのだが、つけすぎた香水なんかと同じで、量が問題なのだ。

 初めて中古のマンションを買ったときに、不動産屋の社員が片手にぶら下げて持ってきてくれたのだが、今や3メートル以上になっている部分がある。斜め上に伸びてそこからアーチ状に垂れ下がっているので、幸い天井には届いていない(が、壁にぶつかっている)。

 木の名前が名前だけに、これまでまったく切ったりはしなかったのだが、あんまり繁茂しすぎているので、まっすぐ上に伸びている2メートルくらいのだけ残して、残りは切って処分しようと考えていた矢先に、この繚乱ぶり。
 まあ、最後に一花咲かせたわけだから、やっぱり予定どおり切ろうかと思っている。
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 これまで、幸福の木と幸不幸との因果関係はなかった(と思う)。
 滅多に花は咲かないので、咲くたびに「幸せも花開けばいいなあ」とか夢想するのだが、何かいいことがあったためしは一度もない(断言)。
 でも、特に不幸というほどのこともなかったわけだから、それでいいのかもしれない。

 ただ、今年はもうすぐ母親が肝臓ガンの手術を受けるので、切るのをその前にしようか後にしようかとちょっと考えてしまう。
 もちろん、そんなこと、手術の成否には何の関係もないだろうし、私は基本的には神も仏も超能力もUFOもネッシーも信じない人間なのだが(でもUFOは一度だけ見たことがある ^^;)、手術日が仏滅に設定されていることを含め、何か引っかかってしまうのは、えもいわれぬものへの畏怖の感情から完全には自由でいられないということか。

 もし神がいれば、熊本だってエクアドルだってシリアだって南スーダンだって・・・あんなことにはなっていないはずだ。

 そう思ってはいても、何か超自然的な存在をまるっきり無視するのにはかすかな抵抗がある。

 無神論者の、それが弱さなのか、と思ってみたりする。