★驚きの「ふるさと納税」

 年度も替わっていつの間にか桜も満開、今日は近所でツバメを初めて見た。去年設置した台に巣を作ってくれることを期待しているのだが・・・

 さて、それとは別に。

 朝日新聞天声人語がいわゆる「ふるさと納税」制度の過熱を憂うような論調のエッセイを書いていたので、気になってちょっとネットで調べてみた。

 制度については知っているつもりだったし、実際、自分の知識は間違っていなかったのだが、いやあ、確かに、こんなすごいことになっているとは知らなかった。

 何だか面倒くさそうで今までまったく無視していたのだが、いろんな意味で、ものすごい制度である。

 まず

1.「日本で唯一の税金の使い道指定ができる制度です」

 なるほど。これは麗しい殺し文句である。

2.「複数の自治体」「に寄附を通じて支援できます」

 そして何より(笑)

3.「お礼の品・特典がもらえるんです」

 この3番目の過熱・濫用を天声人語氏は憂えていたわけだが、こんな制度を作ればこうなることは明らかだったはずだ。
 「お礼の品・特典」を禁止しない限り、地方自治体がこの「降りることのできないゲームを強いられ」(天声人語)る状態は続くだろう。

 寄付という「未来に向けた投資とは」「少なくとも百貨店で商品を物色するような態度からは出てこない」(同)と説教を垂れるのだが、制度設計そのものが、「何かトクをしよう」という人間のサガに基づいているのである。
 そしてそれは、現代人類社会のほとんどが拠って立つ、資本主義と根は一つだ。

 幸いなのはというべきか、「トクをする」ためには、いったん先払いする形になることと、確定申告が面倒だということとが壁になっている。
 そのせいか、全国トップの自治体でも、集めた寄付はせいぜい年に10億あまりだということだ(後記:2015年分は最高35億に膨れあがっているそうです)。

 現状では、ごく一部の人たちの「マイブーム」で終わっているのだろう。

 しかし、確定申告の壁は2015年の制度変更により半分以上取り除かれている。
 もっと使いやすく簡単な制度になったら、数字はすぐに10倍100倍に増えそうである。
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 お説教を垂れられた後なのでちょっと憚られるが、この制度を利用すると、実質年間2000円(にせん円です、念のため)の負担で、たとえば

 牛肉・豚肉・米・ホタテ貝・カニ・エビ・サクランボ・モモ・マンゴー・コーヒー・ケーキ・宿泊券

など(ほとんど何でもあって選び放題)が「ぜんぶ」もらえるのだ(上限は自身の納税額に依存する)。

 こんな制度があれば、「もらえるものはもらっておこう」と考えるのはむしろ当然だろう。
 これまで8年もの間、これだけの「もらえたはずのもの」(×8回)をもらっていないことに、むしろびっくりしてしまう。

 ほとんど唯一の壁は、まだまだ面倒くさいこと。

 だが、そのめんどくささを極限まで減らすサイトも既にあるし、サラリーマンの確定申告も国税庁のサイトを利用すればウソみたいに簡単になっている。
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 ふるさと納税、皆さんは利用していますか。まだだとすれば、今後利用しますか。

 自分の所得等でいくらまでなら2000円の負担で済むか、その数字も上記サイトで簡単に計算できます。

 でも、結局一番儲けているのはそういうサイトの運営者だというのはなんだかイヤですね。何か制度ができたり変わったりするたびに「ビジネスチャンス」だと飛びつく精神こそ、とても貧しい気がします。

 忘れられないのは、その昔、ソムリエの資格まで持っていた西洋料理店主が、介護保険制度の導入とともに、いち早く店をやめ、介護施設に衣替えしたことです。
 若かった私には、いったい何のことなのかわからなかった思い出がありますが、あの変わり身の早さこそが、資本家の鑑なのでしょう。

 それに比べれば、ふるさと納税をしてお礼の品や特典をもらうくらいの庶民のささやかな楽しみに説教されたくないという気もします。
 でも、もしやるとすると、「日本で唯一」「税金の使い道指定ができる制度」なんだと、自分に言い訳をしながらになるかもしれません・・・