●セキュリティホール?

 同僚が新しいパソコンを買い、そのセットアップを頼まれた。

 先日やったはずだが・・・と訝っていると、まだプリンタに繫いでいないから使っていないという。
 そういえば、先方の都合で時間切れになったので、「あとはプリンタに繫いで、ドライバをインストールするだけですから(自分でもできますよ)」と言って終わっていた記憶がある。
 でも、それから少なくとも2か月くらいは経つと思うのだが、せっかく買ったのに死蔵しているのには驚いた。そんなに遠慮しなくてもいいのに。

 プリンタはUSB接続だったので、ドライバだけインストールすればものの数分・・・と思っていたら甘かった。

 なんと!!!

 昨日たまたま別の人が来た折りにドライバのインストールを頼んだところ、ログインパスワードを忘れてしまっていてログインできなかったという。

 「パスワードが通らなかったらどうしようもないですよ」と言いつつ、30分ほどいろいろ試みてもらったり、私もありがちなパスワードを入れたりしてみたが、埒があかない。
 iPhone だったら設定によっては中味がぜんぶ消されてしまうところである。

 でもまあ同じことだ。ログインできないのなら、結局、前回いろいろインストールしたり設定したりしたのをすべて捨てて、ゼロからやり直すしかないかと思いつつ、何とかできないか自分のパソコンで方法を探したところ、あっさりと見つかってしまった。

 まさか、いくら何でも・・・

 こんなに簡単にログインパスワードが破れたら、パスワードの意味がないじゃないか・・・ と思ったものの、書かれたとおりにやってみると、あっさりパスワードを再設定して、ログインできてしまった。

 ログインすると、メールの設定も生きているし、コピーしたというファイルも見られる。

 何のソフトも道具もいらないし、ものの5分もかからない。これって、大問題じゃないんだろうか。

 パソコン関係には疎いほうではないと思うが、まさかこんな恐ろしいことになっているとは夢にも知らなかった。

 「パスワードが破られたら意味がない」
→「簡単には破れないはずだ」

と勝手に思い込んでいたのである。ふつうの人はみんなそう思っているんじゃないだろうか。

 だって、先日来、テロリストの持っていた iPhone のパスコードを破りたいFBIが、その総力を挙げてもできそうにないのでアップルに協力を仰ぎ、断られて裁判所命令まで使ってもアップルは従わず・・・というニュースが世間を賑わせていたではないか。
 結局、FBIは自力で(訂正:第三者の力を借りて)できたみたいだけれど、少なくともそのくらいには難しいものだと漠然と思っていた。

 まったくの素人が、ネットでちゃちゃっと検索するだけで、パスワードのわからないパソコンにすぐログインできてしまうなんて・・・

 みなさんはご存知だっただろうか。私はいまだに信じられないような気分だが、周知の事実のようである。

 その昔、某高機能データベースソフトは、データファイルをダンプする(ファイルの中味をそのまま直接見る)だけで、冒頭の方にパスワードがくっきりと浮かび上がってくるという「仕様」で、腰を抜かしそうになったことがあるが、それ以来の衝撃だった。
 あれからたぶん20年以上・・・まさか今どき、こんなにあっさりとパスワードによるセキュリティを無効化できるのには、ほんとにびっくりした。

 そう思って調べてみると、Word や Excel のパスワードを一瞬で破るツールなんかもすぐ見つかってしまった。「第三者のファイルを解析するなどの行為はしないで下さい」などと書いてあるが、悪意のある人にかかればパスワードなど何の意味もないということになろう。
 2016年を迎えても、こんなレベルなのか・・・


 私の場合、今でも一応、万一ログインされてもデータは見られないように暗号化して別ボリュームにしている。しかし、それ自体破られたりしないのか、改めて確認して対策を考えねばならない。
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 さて、せっかくログインできた同僚のパソコンは、(おそらく私のミスで)キーチェインの初期化に失敗し、結局一からセットアップする羽目になった。
 無駄なパスワード試行から数えて3時間以上かかり、年度末だというのに今日の午後はほとんど仕事にならなかった。

 でもまあ、人に感謝されるのは悪くない。
 それに、お蔭でセキュリティホール(というにはあまりに公然でお粗末だけど)に気づけたのだから、その甲斐はあったと思いたい。