●105万分の1

 夜寝るのが遅かったというのに、朝7時前に起こされる。

 なんでも、就職試験のために出かけた息子が自宅最寄り駅までバスに乗っていったところ、JRが全面運休していて復旧のめども立っていないという。

 そんなことなら、試験も延期になるか、最低でも遅刻しても大丈夫だろうとは思ったものの、寝床で横になったままウェブサイトを確認すると、「本日の試験は予定どおり実施します」と書いてある。

 朝早すぎてサイトの更新が間に合っていないのかとも思ったが、「本日の」とまで言う以上、何とかして行かざるをえない。
 急遽起きだしてカフェラテを半分だけ飲み、すごすごと帰ってきた息子を乗せて車で試験会場へ向かった。

 「念のため」といってバカみたいに早く出かけていた息子の臆病さが功を奏し、無駄にバスで最寄り駅を往復してから私が車で送り届けても、余裕で間に合った。

 息子が帰宅してから聞くと、試験はまったく何ごともなかったかのようにふつうに行われたという。
 遅刻したり欠席したりした人はいなかったのかと聞くと、それなりにいたが、救済措置については特に言及がなかったとのこと。

 止まっていたのはJRだけだったということもあるのだろうが、一応は人生がかかっているんだから、若い人たちを絶望させるようなことだけはしてほしくないと思う。
 いずれにせよダメだったにしても。
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 昨日の運休は、「計105万人への影響」があり、「過去最大規模だという」(『朝日新聞』)。
 しばらくとはいえ、どうすればいいのかと途方に暮れた息子への「影響」や、安眠を妨害された私へのそれは、せいぜい105万分の1に過ぎない。

 残りの104万9999人(というほど正確な数字ではもちろんないけれど)への影響も、小さかったことを祈るばかりだ。