■山あいのフレンチ

 3連休のうち晴れるのは1日だけだというので、久しぶりにバイクに乗って走ってきた。といっても怠惰な私のこと、起床は9時半を過ぎてから、走り出したのは11時半を過ぎてからである。

 もう何度目だろう、亀岡から日吉経由で美山方面へ。
 亀岡なんて、この20年ほど、ほとんど行ったことがなかったのに、通過を含めればここ1年で7回ぐらいは行っている。何が起こるかわからない(まったく大したことは起こってないんだけれど)。

 8月でももっと涼しい日に走ったことは何度かあるというほどの暑さだったが、もう刈り入れが終わった田んぼが散見され、先端から色づきはじめた紅葉を見たのは、やはり秋である。

 ともかく、美山町(といっても、ぜんぜん観光地ではないことろだ)の山あいを走っていると、オーベルジュ(フランス風料理宿)があるのに気がついた。レストランもやっているらしい。確か、通過するとき、Open の看板も見えた。

 通り過ぎてから、さっきのレストランでお昼にするのもいいかもと思った。近くにご飯を食べられそうな店はないし、もう1時過ぎだ。このままだと「道の駅名田庄」になってしまうのはほとんど確実である。
 それに、こんな人里離れたところでフレンチが成立するのかという好奇心もあった。

 Uターンして、店の前にバイクを駐める。駐車場には車が一台。どうもお客さんの車らしい。一応、客はいるのだ(失礼)。
 様子をうかがってからおそるおそるドアを開けると、テーブルには布のクロスがかかっている。やっぱりちょっと、ソロのライダーが食べにくるような店ではないのかと戸口で思案しながらシェフと目を合わせると、以心伝心、「3000円のコース料理だけになるんですけど・・・」と言われた。

 「そうですか、すみません。じゃあ、けっこうです。失礼します」と言って辞去しようとすると、奥さんらしき女性が、「また今度よろしかったら」と折りたたんだパンフレットをくれた。

 店を出て、じゃあ、どこで食べようかなあ、やっぱり道の駅かなあとか考えるうち、もう面倒だし、3000円でもいいやという気がしてきた。

 もともと、1800円とかなら覚悟していた。何といってもフレンチなのである。
 それに、本当なら大山とか知多半島とか、高速代が5000円くらいかかるところに出かけるつもりだった。寝坊してそれができなかったのだが、それを考えれば3000円は安い。
 とかなんとかいろいろ考えたが、一番の理由は、「もう面倒だからここで」である。エネルギー補給のためにおいしくもないランチを食べても、どうせ1000円くらいはする。ここで一発、3000円払えば、話の(ブログの)種になるとも思った(笑)

 再度ドアを開け、「やっぱりいただきます」と告げてテーブルにつく。クロスは重厚な布だが、ナプキンは紙でちょっとほっとする。

 フランス料理の店なんだから当然なのだが、フランス語の好きなシェフで、宿はオーベルジュナカザワ、レストランはシェ・ナカザワとブラッスリーカンパーニュ、ジャムはコンフィチュールである。
 じゃあどうして Open は Ouvert じゃないんだろう? さすがに、それではわからないからだろうか。でも、清水牧場は Ouvert だったぞ。まあ、どうでもいいけど。

 先客は奥の小部屋に隔離されていて、またまたひとりフレンチのような状態である。料理はリーズナブルでおいしかったが、2500円とか2800円とかにすれば、少しはハードルも下がるのにと思った。

 しかしよくまあこんなところでこんな店を・・・ ほんとに山あいで、道路沿いには1軒の人家も(というか、どんな種類の建物も)見あたらないのである。
 帰宅してからウェブで見ると、「南仏のオーベルジュでの修行店が忘れられず、同じシチュエーションを探し求め現在の地の美山に」とあった。
 もちろん、どんな店で修行なさったのかは知らないけれど、そういえば、あのフランスのオーベルジュもこんなシチュエーションだったなあと思った。

 美山の北集落(合掌造りの茅葺き家屋で有名)などに出かけるときはぜひお寄り下さい。ほんとはランチでも予約がいるようです。