■教育再生実行本部(長)?

 新聞に載っていた「自民党教育再生実行本部長」で衆議院議員(しかも、元文部科学副大臣自民党国際局長経験者)の発言を読んで目を疑った。

 「まず目標を決め、そこから逆算して教育の中身を決めていくことが確実です」

 なるほど。それは一つの考え方ではあろう。ところが、これは

 「探したら米国にTOEFLというテストがある」《中略》「これを目標にしようというわけです」

と続くのだ。

 「探したら・・・」

 そんな人物が、「教育再生実行本部長」なのだ。

 だから、TOEFLがどんなテストでどんな問題が出されているのかまったくご存じない。

 「まずは、センター試験から英語をやめ、TOEFL一本にする」という。

 「私は受けたことはないです。受けても10点ぐらいでしょうか(筆者注:120点満点)。英会話を習ったこともあります。うまくなりませんでしたが」

 教育にも英語にも何の見識もない人物が、「教育再生実行本部長」として日本全体の(英語)教育を変えようとしているのだ。

 ご存じだろうか。実は、教育再生実行本部」にも「教育再生実行会議」にも、教育学者が一人も!いないことを。

 今に始まった話ではなく、歴代の教育審議会等のメンバーにも、教育学者はほとんどいない。
 教育学の成果や蓄積を無視して、「有名な」あるいは「優秀な」個人の経験による思い込みによって教育行政を弄んでいるのがこの国だ。
 時には(いや、しばしばか)、優秀とはほど遠い人物すら混じる。

 第一、どうして今ごろになって、教育「再生」なのだ?
 戦後に限っても、何十年にもわたってずっと「改善」「改革」を続けてきているはずなのに、今、教育は死んでしまっているのか。

 そう、今回も「教育再生」などできるはずがない。まして「実行」など。

 ほんとうに教育再生とかそれを実行とかしたいならば、まず、教育についてきちんと研究したことのある人々が中心になって、教育そのものや教育行政を考えなければならない。

 言うまでもなく、大学院から幼稚園まで、ほとんどの教員は個人の経験による思い込みによって教育しているに過ぎず(それはそれで悪くはない面もあるのだが)、教育について研究した経験などない。
 まして、スポーツコメンテーターやら大企業の経営者やら政治家やら作家等においてをや、である。

 「教育再生実行本部」や同「会議」のメンバーには、せめて、教育学の成果をきちんと学習してから教育について語ってもらいたいと(空しく)願うばかりだ。