★気持ち程度の初雪

 例年になく冷え込んでいる気がする。

 遠い方の職場で、一つ目の会議が終わってビルを出たとき、わずかに粉雪が舞っていた。

 ツイッターに「初雪なう」とか書こうかと思ったが(いや、実際には「なう」とか使いません)、次の会議の時間が迫っていたので諦めた。

 別の建物の前を通りかかると、立派なハードカバーの本が無造作に山積みされた巨大なカゴを積んでいるトラックがあった。中型トラックに満載というぐらいの量である。
 まさか、この大量の書籍がゴミになるのか・・・と、寂寞たる気持ちを抑えきれず、荷台にカゴを固定していたおじさんに、「これ、ゴミになるんですか」と聞くと、意外な答えが返ってきた。

 「いえ、リサイクルです」

 なるほど。
 だが、本の価値の主要な部分は、その紙にあるのではない。そこに記された人類の叡智ともいうべきものが漂白されてしまえば、残った物質が別の紙の原料となるにしても、ゴミになるのと大差ない。
 もちろん、おじさんにはそんなことはいわず、「どうも」と頭を下げて通り過ぎた。

 その先には、収容しきれない本がブレードのところに無惨にはみ出したパッカー車が停まっていた。

 上着を着ていない体に、寒さが殊のほか身に染む。

 あ、こんなことを書く予定じゃなかった。

 2つめの会議が終わると、もう雪は舞っていなかった。ほとんど申し訳程度の初雪だったが、雪には違いない。

 明日の朝は、気温が氷点下になるという。

 どこに行く予定もないのでどうしようかと思っていたが、スタッドレスに履き替えようか。