■旅慣れてしまったのか旅疲れなのか

 今さら言うまでもなく、飛行機が好きだ。

 旅客機に乗るときは、可能な限り窓側の席に座り、外の風景を小学生のように眺める。
 特に、離陸と着陸の時は特別で、空へ飛び出す瞬間、地面へ戻る瞬間を窓外を見ながら味わう。

 われわれを乗せたエミレーツ航空140便、ボーイング777-200は、定刻の16時にプラハ空港のA6番ゲートからプッシュバックされ、タキシングを始めた。

 離陸滑走を始めたのは覚えている気がする。

 次の記憶は、「なかなか地面から離れないけど大丈夫なのかなあ、いつまで走ってるんだろう?」というものだった。
 ふつう、この手の飛行機は45秒以内には離陸する。

 次の瞬間、窓の外を見ると、どうやら機はかなりの高度を飛んでいるらしく、見えるのは地上の風景ではなく、空と西日のみであった。

 しばらく何のことかわからなかったが、時計を見ると16時15分近くになっている。
 たぶん生まれて初めて、離陸の瞬間に寝てしまっていて、貴重な経験を逃してしまったのだ。

 空からプラハの美しい街並みを見るのが楽しみでもあったのに、知らない間に街から離れてしまうとは・・・

 子どものようにわくわくと離陸の瞬間を楽しむような純粋な気持ちが、やはりそれなりに旅慣れてしまったことで摩滅してしまったのだろうか。

 それとも、初めての旧東欧諸国への、しかも慌ただしい旅に、いつもより疲れていたのか。

 (以上は、プラハ→ドバイの機内で書いて、ドバイでアップしました。)