●いずこも同じ悪の構造

 米空軍の新型輸送機オスプレイアフガニスタンで不時着して4人が死亡した一昨年の事故で、事故調査委員長を務めた空軍幹部がエンジンの不調が事故につながったという報告書をまとめたところ、内容を変更するよう上官から圧力をかけられたことが分かった。(朝日新聞7月16日朝刊)

 調査委員長を務めた空軍の退役准将によると、「上層部は早い段階から、操縦士のミスを事故原因とすることに決めていたと思えてならない。違う結論を導いた私は、頭がおかしくなったかのように扱われた」(同)という。

 空軍司令官だったワースター中将(当時)は、調査委員会の説明を打ち切り、「悪いが、いかなるエンジンの不調があったとも考えられない」と言い渡して報告書を作り直すように命じた(同)のだそうだ。

 調べてもいない者が・・・

 要するに、空軍や海兵隊にとって、オスプレイのエンジンに不調が出たことは都合が悪いので、なんとしてでも隠蔽したかったということらしい。

 しかし、この措置は、当の空軍や海兵隊の名誉と命にかかわるのだ。その二つを軽んじるような輩はもはや軍人ではありえないし、まして将軍ではありえない。

 それとも、名誉や命を重んじることを将官に求めることなど、望み得ないのであろうか。なんという軍隊だ。いや、軍隊とは本来そういうものなのだろうか。

 エンジンの不調が主因だとすれば、操縦ミスのせいにされたパイロットの名誉はどうなるのか。殉職したうえ、死人に口なしとばかり責任を押しつけられたのでは、誇り高き空軍パイロットは浮かばれまい。

 まして、この事故ではパイロットを含む4名もが死亡している。それら死者への冒瀆であることも明らかだ。

 さらに、一番の問題は、事故原因を隠蔽して事実をねじ曲げることで、防げたかもしれない将来の事故をも誘発し、新たな死者を出してしまう危険があるということだろう。

 「部下の命なんて知ったことか、オスプレイのエンジンに不調があってはならないのだ」

 司令官であるワースター中将は、明らかにそう考えているのである。こんな輩に率いられる軍人たちには、心の底からの同情を禁じえない。

 ・・・だが、司令官もまた、より大きな構造の中の歯車に過ぎないのではないかという気も一方ではする。
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 ひるがえって、私たちの国や組織はどうだろう。

 もはや贅言は要しまい。私たちも同じ構造の中にいることを、すでに十分思い知らされている。