◆ショッピングモールが5時に閉まる国

 土曜日、首都キャンベラでたぶん一番大きなショッピングモールのカフェで仕事の打ち合わせをしていた。インターネットの使える場所を探すとそこになった。
 ブリズベン在住の知り合いによると、オーストラリアのインターネット事情はかなり遅れているのだという。

 それはともかく、夕方5時前になると、客が誰もいなくなっているらしいことに驚いた。店が閉まりそうなのでそそくさと出る。
 私以外の3人はみなオーストラリア通なので何の驚きもないらしいが、土曜日の夕方5時に閉店するショッピングモールが日本にあるだろうか。
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 月曜から木曜までは夕方早くに帰ってきて、金曜日はランチに出た後そのまま帰宅し、土日は決して働かないというのがオーストラリア流なのだという。仕事のメールも5時を過ぎるとぱたっと来なくなり、土日にはまず来ることがないそうだ。

 商店の店員も5時までしか働かないのだろう。土曜日に働いていることに感謝すべきなのかもしれない。

 それでいて経済はバブルというほど加熱しており、物価上昇率は毎年3%以上。世界不況などどこ吹く風であるらしい。
 日本にいて悲観的な経済見通しばかり読んでいると、ここはまるで別世界のように見える。

 長時間働かなくても貧しくならない国があり、そこには人生を謳歌している人たちが住んでいるのだ。
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 夕食を食べたレストランでウェイターの態度が悪かった。店のボスに「お食事はいかがでしたか?」と聞かれたので思い切ってそれを告げると、「彼らはまだ研修中なのだが、キャンベラは人手不足で困っているのだ。ずっと、いい人を探しているんだが、なかなか見つからなくて・・・」と、同情を感じてほしそうな様子だった。
 謝るのが先だろうとは思うものの、2人で一緒に「お互い大変ですね」みたいな雰囲気になってしまったのがおかしかった。

 アメリカ発で特に若年層の失業と貧困が「世界的に」騒がれているときに、人手不足を嘆くような経済状況がここにはある。
 日本のマスコミも、経済や通貨の話になると、世界にはアメリカとヨーロッパと日本だけしかないような報道をしているが、南半球にはこういう国があるのだ。
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 「唯一の安全な通貨である円に資金が流れ込んで独歩高になっている」なんて書いてあるけれど、オーストラリアドルはもはや米ドルよりも高くなってしまったし、カナダドルだってそうだ。だれがこんな状況を想像しただろう?

 グローバル競争に勝つためにと、弱肉強食で戦ってきた国々が疲弊して貧しくなり、働くのは最小限にしている人たちが経済的繁栄を謳歌している。
 どちらか選べるならば、前者を選ぶ人がいるだろうか。

 まあ、あんまり働かなくて?ギリシャみたいになっても確かに困る。どうしてギリシャがオーストラリアになれないのか、経済に疎くてよくわからないけれど、後者には広大な国土と資源があるからだろうか。

 じゃあ、ニュージーランドは?