■あゝ野麦峠 または そこもかしこも通行止め

 晴るるかたなくつれづれなれば、ペンションの奥さんに教えていただいた「野麦峠の館」というのに行ってみることにする。

 上高地乗鞍林道を通って奈川に抜けようと思っていたら、ちょっと奥のゲートのところでちょうど係の人と鉢合わせして、通行止めにされてしまった。
 Uターンしようとしているとゲートを閉めているのが見えたので、もう30分ほど早ければ通り抜けられたものと思われる。どうせ今日は何もできないんだし・・・と、朝のんびりしてたのをちょっとだけ後悔した。

 仕方がないので、いったん前川渡まで降りて、国道158号経由、奈川渡ダムから野麦街道へのコースを取る。
 しかし、当然のことながら、野麦峠もまた、通行止めなのであった。

 月夜沢林道への分岐までは行けたので、帰りに寄るつもりだった清水牧場チーズ工房へ向かう。3年前に来たときは未舗装だった道がきれいに舗装されており、いまや、フェラーリでも行けるようになっている。
 ただ、到着寸前、ちょっとした段差があるのと、駐車場はまだ未舗装なので、フェラーリオーナーは注意されたい。

 ウェブサイトで、チーズがほとんど売り切れなのは承知していたが、どうせチーズは食べられないので関係ない。
 奥さんに話を伺うと、日本経済新聞が選んだ国産チーズのランキングでバッカスが第一位を取ってしまったということで、それ以来以前にも増して注文が殺到しているのだそうである。

 以前、このブログで「日本で1〜2を争うというおいしいチーズを真剣に追究していらっしゃる」と紹介したのだが、ほんとうに日本一になってしまったのだ。
 ただ者ではないとは思っていたものの、まさか現実にそうなるとは・・・

 残念ながら、今回はご主人にお会いできなかった。連絡もせずに伺って、「いらっしゃいますか」とも聞かないのだから当然なのだが、やや心残りであった。
 奥様も、電話での顧客対応やら台風への備えやらでお忙しそうで、そうだろうなとは思っていたものの、申し訳ないことをした。

 牛乳をご馳走になり、ドリンクヨーグルトだけ買っての帰り際、扉の看板が Ouvert(開店)になっているのに気づいた。ということは、外から見れば Fermé(閉店)だろうと思ったら、案の定そうだった。
 定休日でないのは確認してきたのだが、台風なのでお休みにしたのだろう。気持ちよく応対していただいたが、恐縮してしまった。
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 その後、色気を出して月夜沢林道方面に向かうが、ものの1kmも行かないうちに通行止め。
 諦めて戻り、中山道の奈良井や藪原の宿でも見学しようかと思ったが、そっち方面すら通行止めだった。

 仕方ないので、「道の駅 風穴の里」を訪れ、近くにある風穴(というか、岩から吹き出す冷気を利用した倉庫)を見物し、安曇資料館と「みどの工房」(草木染め織物)を見学した。
 食べられるホオズキというのを売っていたので試しに買ってみると、買った量の倍ほどのおまけをつけてくれた。

 新島々駅のバスターミナルで折り返す。梓川方面にもちょっと向かってみたが、そこもまた通行止めであった。
 月夜沢も梓川も、今回の大雨による通行止めではない。もともと、あちこちで通行止めの多い地域なのである。

 宿に戻ろうと158号線を西進していると、上高地への入り口となる沢渡と新島々を往復するバスがやたらに走っているのが不思議だった。数台は見たと思う。うち2〜3台は中が見られたが、見える範囲に乗客はいなかった。
 こんな天気で、しかも上高地から沢渡は通行止めのはずなのに、律儀に時刻表どおり運行しているのだろうか・・・

 雨はともかく、風はほとんどなかったのだが、奈川渡ダムで車を降りると、ちょっと台風っぽい風が吹いていた。もっとも、ここはいつ来ても強い風が吹いているような気がする。
 同定できないツバメがたくさん飛び交い、(たぶん)キセキレイがいた。
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 ともかく帰ってきた。昼寝して温泉につかったら、また一人フレンチである。

 朝も、イングリッシュブレックファスト風で、イギリスよりも洗練された朝食に、焼きたてのパンまでいただいた(なので、昼食は抜いてヨーグルトだけにした)

 たった一人の宿泊客のためにご面倒をおかけしてすみません。