●幻の速度違反

 車を運転し始めてから30年間で、2度、速度違反で検挙された。

 以前にも書いたが、
1度目は、中央分離帯のある片側2車線の下り坂を53km/hで走っていて
2度目は、自転車歩行者通行禁止で中央分離帯のある高架道路を(たぶん)55km/hぐらいで走っていて
だった。

 1度目の時は、書類を作成している間に珍走族らしき連中が爆音を立てながら暴走していったが、もちろん?つかまらなかった。
 しかしこのときは反則金を納めた。まだ未成年だった。

 2度目はどうも冤罪くさかったし、警察官が明白な嘘をついて反則切符にサインさせようとするので、それに対する抗議の意味もあって認めなかったら、供述調書を取られた。
 その調書にすら、私の供述をきちんと書いてくれないので(これも明白な違法行為である)、結局それにもサインしなかったら、その後まったく音沙汰がなかった。おそらく書類送検されて不起訴になったのだと思われる。

 速度違反で検挙されたのはその2回だけだ。
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 さて、その2度の速度違反が2つとも、今、同じ場所を同じ速度で走っても違反にならない。制限速度が60km/hに変更されているからである。

 その場所の道路構造はまったく変わっていない。交通量はむしろ増えた。だから以前よりは危険度が増しているはずだ(それでもすごく安全な道だけど)
 つまり、私は、今よりさらに安全な道路を今の制限速度以下で走っていて検挙されたことになる。
 (2度目の計測速度は現在の制限速度よりいくぶん高かったと思うが、仮にその速度で走っていても検挙されるような数字ではない。)

 免許取得以来30年、人一倍安全運転に気を配ってきた私が、たった?2回検挙された速度違反は、その2回ともが、合理的な理由のないものであったことがわかる。

 制限速度の設定が間違っており、それは後に改められたのだ。

 過ちては則ち改むるに憚ること勿れ・・・

 だからまあいいのだが、その過ちのために私の輝かしい?無事故無違反記録に汚点をつけたのは許し難い。特に2回目の検挙の結果、(行政処分1点は自動的についてくるので)ゴールド免許じゃなくなって、任意保険料だって5年間にわたって高くなっている。

 日本国憲法第39条には「何人も、実行の時に適法であつた行為《中略》については、刑事上の責任を問はれない」という文言がある。なのに、その逆の、過去に違法であった行為が適法になった場合には救済されない。
 実行時に違法だったのだからこの条文が適用されないのはわかるものの、結局は適法となった行為で責任を問われたままなのは釈然としない。

 同じように納得できない思いをしている人も多いだろう。

 とにかく、「これほど安全な道路はない」というような場所で、「どうしても少しスピードが出てしまう」状態の車を、50数キロで走っているからといって検挙したりするのだ。法定速度は60km/hなのに。

 ノルマを果たすため? 反則金を稼ぐため?

 犯罪を防ごうと、あるいは犯人を検挙しようとしている警察官たちまでもが、こういう交通取り締まりのせいで市民からの信頼を失っていく。

 警察にとっても百害あって利は少ないと思うんだけど、もう少しまともな交通取り締まりはできないのだろうか?