★放射性物質の拡散予測・・・ではない

 ドイツの気象庁?だとか、イギリスの天気予報サイトだとかが、放射性物質の拡散予測に見える画像を流していて、話題になっているようだ。

 たとえば、こんな。

Germany_2Britain_2

 これらの図はいずれも、気象条件によってどんどん変化するので、見ていると、ひろく日本全国、さらには朝鮮半島や台湾、中国やロシアにまで放射性物質が拡散しているかのような印象を受ける。

 日本でも、「気象庁がようやく放射性物質の拡散予測をホームページで初公開」(toyokeizai.net)だそうである。

 だが、これらはまっっったく、放射性物質の拡散状態を表したものではない

 福島第一原発から放射性物質がものすごく大量に空気中にばらまかれた場合、気象条件からみるとこういうふうに拡散していくであろうというシミュレーションにすぎない。
 しかも、実質的にはゼロの場所にもひろく色が塗られたりしている。

Japan 気象庁が出している図の単位を見るとよくわかるが、福島原発から1ベクレルの放射性物質が出た場合に、いちばん外側の部分で10京分の1ベクレル/?となっている。

 10京分の1ベクレルって何だ?

 食品衛生法による暫定的規制値だと、水や牛乳で1キロあたり300ベクレルだというから、10京分の1ベクレルというのは、あまりにも小さすぎて何のことかわからない。

 逆?に考えてみよう。上の図で、1ベクレル/?の放射性ヨウ素がたとえば広島に降下するのは、福島第一原発で3日間にどれほどの量が放出された場合か。
 答は、100ペタベクレル(わかりやすく?言うと、1億ギガベクレル)になると思う。

 実際に出ているのは明白にそれ以下なので、まったく無視できるという計算になる(はずだ)。(注:↓「さらに後記」参照)

 こんなものに「放射性物質の地上への降下量」などという馬鹿げたキャプションをつけて流す報道機関の気が知れない(単にバカだからだろうか)。

 たとえば関西の場合、福島第一原発から、数千兆ベクレル放射性物質が・・・みたいな報道が始まった時に、初めて「もしかするとちょっと来るかも」と思い始めてもぜんぜん遅くはない(と思う)。
 それでも1ベクレル/?にすらならないのだ(「カラダに良くて、飲泉可能な杉村温泉は、(1リットルあたり?)700ベクレル」だという。もちろん、本当に体にいいのかどうか、私は知らないし、ベクレルでは身体への影響は直接語れないにしても)

 こういう図を流すと、誤解する人の方が圧倒的に多いだろうから、(内外とも)メディアはもっと考えてから行動してほしい。

 (なにぶんまったくの素人なので、間違い等ありましたらご指摘くだされば幸いです。ただ、現時点ではほとんど公表する意味のない(というより公表すべきでない)シミュレーションであるのは間違いないと思いますが。)

 後記:2011年4月7日(木)のNEWS23で、上記イギリスの図(カラフルな方)が危機感を煽るように使われました。直後に、韓国でも放射性セシウムが検出されたという報道。
 微量の検出自体は事実なのかもしれませんが、報道の仕方は明白に間違っていると思います。

 さらに後記:2011年4月12日(火)、今回の原子力事故が評価尺度レベル7に引き上げられました。「放出された放射性物質の総量」は「放射性ヨウ素換算で37万〜63万テラベクレル」と推定されるそうです(asahi.com)。
 これは、37〜63京ベクレル、370〜630ペタベクレルに当たります。
 無茶を承知で(気象状況は刻々と変化しているので、4月上旬の3日間だけとこの一か月全部では意味がまったく違うでしょうから)、この数値を上記気象庁の図に当てはめると、広島で 3.7〜6.3 ベクレル/?、大阪で 370〜630ベクレル/?ということになります(実際は、期間が10倍の間の総量なので、もっと拡散して少なくなっていると推定されますが)
 広島は安心ですが、大阪はちょっと心配し始めた方がいいのでしょうか・・・ いや、実測値では関西はずっと平常値のようですので、少なくとも現時点まではやはりまったく心配する必要はないと思います。