◆幸せの絶頂は・・・

 チリの鉱山に閉じ込められていた33人が、救出用カプセルを使って次々と助け出されている。

 今、この瞬間にも、おそらく誰かが地上に出てきて家族とともに喜びを爆発させていることだろう。

 予想より格段に早かった救出劇にまずは祝福を送りたいと思う。

 しかし・・・

 救出された後に待っているものは何か。

 当面はいろんなところに引っ張り出されるだろうが、人々は飽きるのも早い。
 その後に待っているのは、相変わらずの日常である。
 もしかすると、また鉱山に戻って日々働き続けなければいけないかもしれない。いや、もしかするとではなく、ふつうはそうなるのではないか。

 ということは、今が幸せの絶頂であり、これを超える幸せは今後まずない、というふうにも取れる。

 それとも、これがきっかけでヒーローになり、その後作家になったりタレントになったりする人たちも出てくるのだろうか。

 いずれにせよ・・・

 「感動的」な救出劇の報に接しながら、考えるのはそんなこと・・・という自分自身にちょっと失望している。

 20歳のときから感じている「日常性の呪い」は、素直に感動することすら許してくれない。