■だれが猫に鈴をつけるか

 大阪府兵庫県で感染者が次々と明らかになるに及び、多くの学校や公共施設で休校・休業の措置を取ることになった。

 そんな中、大阪府橋下知事

「これでは大阪がマヒする。通常のインフルエンザの対応に切り替える必要があるのではないか」と述べ、舛添厚生労働相に見直しを要請した(asahi.com

という。

 蛮勇である。

 だれが猫の首に最初に鈴をつけるのかと思っていたが、やはりあなたでしたか。

 まあ、大阪で感染者が多数出たという偶然にもよるのだが、他の都道府県で知事がこういう発言をするのは、少なくともこんなに早くではないだろう。

 橋下知事、滅茶苦茶なおっさんではあるのだが、陋習にとらわれない点(だけ?)は評価できると思う。

 陋習・因習・伝統・利権・権威・面子、それに責任逃れにばかり拘泥している旧来の政治家や官僚組織だとこうはいかない。

 もっとも、「このお調子者の軽薄知事なら、自分たちには口が裂けても言えないようなことをさらりと言ってくれるのではないか」と周到に計算した、大阪府の役人たちの功績かもしれない。
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 これはもちろん憶測だが、国は、今回の橋下知事の発言を聞いてほっとしているのではないだろうか。

 だれかがやめてくれと言わなければ、もはや引っ込みがつかないし、自分からやめて何かあった時に責任問題になるのはイヤだし・・・というジレンマに陥っているのではないかと思うのだ。

 いや、ジレンマに陥るのは数日後とか1週間後とか10日後だったかもしれない。

 このタイミングでこんな発言が出るのは、鈴をつけるにしてもちょっとフライング気味という感じだろうか。

 だがしかし、こういう感染症に対する対応は、個々人の良識や努力に呼びかけるとともに医療機関の態勢を整えるだけにするか、何もかも犠牲にする覚悟で徹底的にやるか、のどちらかしかないのではないか。

 今回の事態が証明したように、その中間はおそらく無意味である。

 これは結果論でも後付けの理屈でもなく、私レベルの者でも、専門家が事前にそう発言するのを何度か目や耳にした(「豚インフルエンザ」は初耳だったけれど)。

 成田の「濃厚接触者」は1週間も強制的にホテルに隔離されていたのに、今回の「濃厚接触者」は、なるべく自宅にとどまるよう要請されるだけだという。
 確かに、何百人もホテルに隔離するわけにはいかないだろうし、数はすぐに数千人になる。

 いずれにせよ、1週間10日のうちには、もう少し冷静な対応に舵を切らざるをえなくなるだろう。

 やっとホテル監禁から解放されて家に帰ったと思ったら、まわりは「濃厚接触者」だらけという元「濃厚接触者」は割り切れない思いを抱くだろうけれど。