★またも思い込み

 見慣れないがけっこう綺麗だなと思って写真に撮り、「戸惑う被写体」にも2枚載せた蝶(その1その2)の名前がわからなかった。

 家にある昆虫図鑑を全部めくっても該当する蝶は載っていない。うちにはまともな昆虫図鑑はないし、いずれにせよ、チョウの種類はあまりにも多いので、網羅していることを求めるのはちょっと無理だろうと思っていた。

 だが、所詮は私が簡単に目にして写真まで撮れた蝶だ。そんなに珍しいものであるはずがない。

 今日、本屋に寄ったときにふと思いだし、図鑑をめくってみることにした。

 けっこうまともな蝶類図鑑でもやはり載っていない。そんなバカな・・・と考えるうち、ふと気がついて、ガの方も見ることにした。

 なんとそこで、これだ!と思える蛾を見つけたのだ。

 あれは蝶ではなく、蛾だったのだ・・・ 飛び方も止まり方も、何ら蛾を思わせる要素はなかったんだけれど。

 いずれにしても、あとで調べてみると、うちの図鑑には載っていなかったのだが、私ばかりではなく家人も、蛾のページはめくらなかったという。

 われわれの頭の中にある、確固としたチョウとガの区別にも改めて気づかされた。私はたとえば、ウマとウシを区別するようにチョウとガを区別する。しかし、たとえばフランスでは、一般にチョウとガとはまったく区別されないそうである。
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 本屋でめくった蝶類図鑑では、もう一つ、驚くような発見をした。

 コンビニのガラス窓に止まっていたアゲハを不憫に思い、わざわざ山の中まで連れ出して逃がしてあげたのだが、これもまた、アゲハモドキという名のガだったのである。

 今見ると、こちらの方は羽を開いて止まっているし、その羽も垂れ下がって見える。よく見ると、触角も蛾のそれである。

 しかしながら、図鑑で「アゲハモドキ」という名と写真を見るまで、アゲハの1種だと思ってまったく疑いもしなかった。
 アゲハの同定はけっこう面倒なので、何アゲハなのか追究もしていなかったし。
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 結局、「綺麗だ」とか「記録しておくと面白い」と思って撮り、わざわざブログにまでアップした「蝶」の写真のうち、少なくとも3枚は蛾だったということになる。

 つい昨日、「「何ごとによらずものごとをすぐに決めつけ」ず、「あらゆる物事と自分のあいだにしかるべき距離を置くこと」を心がけねばならないと改めて思った」ばかりだ。

 その昨日をまたいで、私の中に思い込みが存在し続けていたことになる。

 思い込みや決めつけという認知の誤謬はかくも深いのである。