■予定通り?順次外れていくのだが・・・

 早めに入ったので比較的空いていた蕎麦屋さん。だが、ここでは滅多に蕎麦は食べず、熱いうどんを食べるのが常だ。今の時期なら文句なく鍋焼きうどん。朝の気温2℃という日には絶品である。夏でもおいしいのだ。

 だが、4人座れるテーブルに1人となったので、混んでくるのが気になって、早く席を空けなきゃと、やや落ち着かない。早く食べようにも、うどんは煮えたぎっているし。
 そのうち、やはりというか、待つ人が出始めた。

 そんなとき、口の中に異物を感じる。「えっ、何か入っていたのかな」と思ったのは一瞬。ついこないだ経験したことなので、また歯から外れた金属だろうと見当をつける。やはりそうだった。昔の接着剤の力が、餅の粘着力に負けたのだ。

 それにしても続くなあ。今調べたら、前回からたった9か月あまり(こうやって日記をつけているのはほんとに便利である)。

 たぶん、20年近く前に入れた金属なので、そろそろ外れ時なのだろう。欠けた歯を3本連続して治療した場所があり、前回は一番前、今回は真ん中だ。

 前回よりは大きいピース。今度こそと、ちょっと思い切って決心して、白いセラミックを入れてもらうつもりで歯医者に出かけた。
 順次外れていくだろうから、その度に白くしていけば、口の中から銀色がなくなる、という計画はまだ生きている。

 それでも、道すがら、弱気の虫が顔を出す。日も暮れ、氷雨が降っている。
 「たしか4万円って言ってたよなあ・・・ 全部で4万円で済むんだろうか。自由診療ということになるし、技術料なんかがプラスされて6万円とかにならないだろうか。だいたい、混合診療を認めないという国の方針は裁判でも否定されているのに、いまだに・・・」

 思いは広がるのである。

 だが杞憂であった。歯科医に相談すると、「全力で」とまでは言わないまでも、かなり熱心に保険治療を勧める。「上だから目立ちませんし、やはり金属が一番強いですよ。セラミックだと保険が利かなくて高価になりますし」

 もしかして、自由診療で4万円取るより、保険診療で5千円取る方が儲かるのかな。いや、自由診療なのだから儲かる金額を取ればいいし、以前から思っていたのだが、この人はどうも金儲けには興味がなさそうな気がする。たぶん、その意味ではいい医者なのだろう。

 で、遠大な計画はあえなく崩れ、またもや保険で金属を入れてもらうことになった。

 これでもし、奥の3つ目が外れたら、「ああ、やっぱり3つともセラミックにしておけばよかった」と思うだろう。だがまあ、どうせ1つ目は金属なのだ、と諦める。

 下だったら目立つので、セラミックにするのもやぶさかではないという風情であった。よし! 今度こそ、下のが外れたら挑戦しよう。

 いやもちろん、外れないのが一番いいんだけど。