★暗黒裁判 —逆転有罪

 不愉快ついでにもう一つ。

 うちに配達されてくる紙のうち、重量比で6割ぐらいはゴミである。新聞を除けば、95%以上はゴミだろう。あ、新聞を取ってなければ折り込み広告も入らないからそうでもないか。
 それでもたぶん、9割近くはゴミと言っていいかもしれない。もっとかな。

 つまり、うちのドアポストには、日々ゴミが投げ込まれ、私はその処理に追われていることになる。
 確かに、ダイレクトメールとかチラシとかビラとかのほぼすべては不要だ。入れられたゴミを整理して改めてゴミに出す身にもなって欲しいとも思う。環境にも悪い。

 しかし、それでも・・・
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 マンションに立ち入ってドアポストに政党のビラを入れた住職が、東京高裁で逆転有罪判決を受けた。罰金5万円。
 だが、それ以上に、逮捕から起訴まで23日間も身柄を拘束されている。勤め人なら職を失いかねない。

 ビラを配っただけで・・・

 一審の東京地裁は良識を持って無罪判決を出した。もともと、逮捕も勾留も起訴も不当なのである。無罪判決は当然だ。

 それなのに、逆転有罪判決・・・ 自衛隊のイラク派遣に反対するビラを撒いた人たちへの判決も、同じ経過を辿っている。
 下級審の良識を連続して破棄してしまうとは、何をやってるんだ、東京高裁。

 確かに、形式的には住居侵入の犯罪要件を構成する。だが、これが刑事罰を科すほどの犯罪なのか。まあ、5万円はともかく、逮捕して長期間勾留し起訴するほどの犯罪ではないのは明白だろう。

 以前にも書いたが、こんな罪でいちいち逮捕・勾留・起訴しなければならないのなら、日本の警察と裁判所は即座にパンクして機能しなくなる。
 おそらく日本中で、マンションを中心に毎日毎日住居侵入罪を繰り返している人が、千人、いや万人単位で存在するだろう。

 以前住んでいたマンションは、ドアポストはおろか、集合ポストの手前にも「チラシ・ビラ配り禁止 立ち入り禁止」の看板を立てていたが、にもかかわらず、どちらにも日々”紙ゴミ”は投げ込まれていた。
 今住んでいる家も、「住居侵入」しなければポストに近づけない構造になっているが、相変わらずなのは冒頭に書いたとおりである。

 よし! 郵便・荷物の配達以外立ち入り禁止の看板を立て、チラシやビラをポストに入れた人を片っ端から現行犯逮捕して警察に引き渡してやろう(念のため、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定められています(刑事訴訟法第213条))。

 ちゃんと勾留・起訴して有罪にしてくれるんだろうな。

 現実にそんなことをすれば、頭がおかしいと思われて警察に説諭され、場合によっては逮捕監禁罪でこちらが罪を問われるのがオチだろう。
 そういう馬鹿なことを、警察と検察と裁判所が揃いも揃ってやっているということになるのだ。

 「いや、片っ端から逮捕なんかしていない。特定の政党のビラを撒くヤツとか、自衛隊イラク派遣に反対するヤツらだけをピンポイントで摘発している」

と弁解するのだろうか。言うまでもなく、それこそが問題の本質なのだ。こんなにも恣意的に特定の人だけを狙い打ちにする不当な法の適用が許されるはずがない。

 チラシ・ビラ配りの人たちをみんな起訴して有罪にするのなら、少なくとも現状よりはマシである。馬鹿げたことだが。

 まだこの国の司法に絶望したくない最高裁の良識に期待したい。