●とうとうやっちゃいましたね

 とうとうやっちゃいましたね、ボンバルディア DHC8−Q400。

 まあ、こういう書き方ができる(=かすり傷を負った人さえゼロ)のがせめてもの救いだ。

 以前から各種マイナートラブルが続き、利用者の間でも悪評が定着してきた感のある機材。今回の事故で、いよいよ悪い評価が一般に固定するだろう。

 「ボンバルディアにはもう乗りたくない」という乗客の声がすべてだ。こんな言われ方をする航空機メーカーが他にあるだろうか。

 ご承知の通り、最後まで前輪が降りず、機首を滑走路に接地させ、火花を散らしながら着陸した全日空機の話である。

 たまたま耳にしたラジオのニュースで、前輪が出ないまま上空を旋回している機の存在を知り、着陸数分前にテレビのあるところへ移動できた。
 結果、着陸を生放送で見ることができ、飛行機乗りの端くれとして感慨深いものがあった。

 場所も、先日降りて上がったばかりの高知空港。見覚えのある風景の中、前脚の出ない飛行機がファイナルに入ってくる。大丈夫だろうと思っていたとはいえ、やはり無事着陸するとほっとした。
 そして、事後の消防の放水?がツボを外している(特に2台目)点にユーモアさえ漂い、一気に緊張感がなくなった。

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 各種情報は報道機関にお任せするとして、気づいたことを2つだけ。

 1.事前に滑走路に撒かれた消火剤、位置の計算を誤っていないのだろうか。

 機はだいたい予想通りの形で着陸した。なのに、けっこう広範囲に撒かれた消火剤は何の意味も持たなかった。機首が接地した場所より後ろに撒かれていたからだ。消火剤の上を機首が滑れば、火花が出ることすらなかったのではないか。
 適切に撒かれたのか検証が必要だと思う。

 2.地上での案内は情報を正しく伝えず、かつ、配慮を欠いていたのではないか。

 新聞によると、弟を出迎えに空港に来ていた女性が、「航空会社の人から「胴体着陸するかもしれない」と伝えられ、泣いてしまった」という。

 乗客の方はみんな比較的冷静だったらしい。

 この違いは、機長が「日ごろ訓練しているので大丈夫です」と自信を持って伝えていた点に起因するところが大きいと思う。
 地上職員は、「ほぼ間違いなく無事着陸できる」ことをちゃんと伝えたのだろうか。

 前輪が出ていないのだから絶対はないとはいえ、今回のケースではケガ人が出たりする可能性はまずなかった。地上職員はそのことをしっかりと伝えなければならない。でなければ、「胴体着陸」などと聞いた乗客の身内は、当然のように最悪の事態を予想してしまう。

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 まあともかく、インジケータのランプがつかないとか消えないとかいうのがこれまでのトラブルの多くを占めていたと思う。
 車輪が格納できないというのも何件かあったが、出ないよりはマシである。油圧で車輪が下りないときも、フェイルセーフの手動では必ず下りていた。

 繰り返しになるが、今回の事故は「あーあ、とうとうやっちゃいましたね」という感を拭えない。

 大阪から高知は、代替となる交通手段に乏しく、飛行機が頼りなのである。そして、大阪−高知便は今やすべてボンバルディアではないだろうか。

 「ボンバルディアにはもう乗りたくない」と言ってしまうと、ものすごく高知に行きにくくなってしまうのだ。これは、他の中距離地方便でも共通して言えることではないか。

 鳴り物入りで華々しく導入された新鋭機。あまたの車やパソコンやデジカメやその他の電器製品と同じく、(初期)不良が出尽くした段階で購入すべきだったのかもしれない(その場合、(初期)不良のツケはだれか他の人が負わなければならないんだけれど)。

 いずれにせよ、今となっては後の祭り。これからどうするか、である。

 そうそう、わがセスナは車輪を格納することすらできず、その意味ではすこぶる安全です。