■ハケンの品格、国家の品格

 とうとう、派遣労働の問題点と派遣労働者を正面から取り扱ったドラマが誕生した・・・わけではない。

 だが、知る限り、派遣という雇用形態に明白なスポットを当てたテレビドラマはこれが初めてである。ストーリーはマンガそのものだが、非正規雇用の問題を世間に知らしめるのにテレビドラマほど大きなメディアはない。
 幸い、けっこう見られるドラマに仕上がっていそうなので今後に期待したい。

 登場人物の年収がいちいち出てくるのがリアルでおもしろかった。それにしても、いくら一流企業とはいえ、部長である松方弘樹の年収が1600万円とは、ちょっと多すぎないだろうか。それとも、それぐらいもらっているのが普通なのかな。

 それに、正社員だ派遣だとカテゴライズして語る登場人物ばかりなのには驚いた。ドラマの中のできごとなのか、それとも世間もそうなのか。

 私の職場にも派遣労働者はけっこういる(と聞いている)。だが、ほとんど区別はつかないしつけない。私はいちおう正職員なのだが、一回り以上年下の派遣の人にも「あのう、すみません。ちょ、ちょっとよろしいでしょうか」みたいな感じで接している。もちろん、別に向こうが上司だというわけではない(部下でもないが)。

 まあ、のんびりした職場(私だけ?)だから人間対人間としてきちんと向き合えるのだという面はあるのかもしれない。だがやはり、「派遣は黙って正社員の言うことを聞いてればいいんだよ」みたいな台詞にはびっくりする。一度でいいからそんなことを言ってみたい(ウソです)。

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 雇用環境がどんどん悪化していくと思っていたら、当初年収400万からという無茶苦茶な話もあった「ホワイトカラー・エグゼンプション」(=残業代ピンハネ法案(by 菅直人))対象者の基準が900万とかに落ち着きそうな雲行きになってきた。

 選挙を気にしながら、それでも国会審議にかけるためにごまかしの手を打ってきたのだろう。いったん法律を作ってしまえば、後で年収基準を下げたり対象者を広げたりするのは簡単だ。
 1986年にできた労働者派遣法がどんどん改悪され、1999年を画期として、とうとう現在のような悲惨な状況になってしまったのは周知の通りである。

 安定した雇用をできる限り多くの人に用意するのが重要なのは論をまたない。世界一金持ちの多い国アメリカのワーキングプア(4人家族で年収約240万円未満)は 4000 万人に迫る勢いだという。
 ER(緊急救命室)でもよく問題点として描かれているとおり、アメリカには安心できる医療保険制度もない。

 「美しい国」とは、日本をそんな国にすることなのだろうか。
 「うつくしいくに」「にくいしくつう」・・・