■気分は日本アルプス

 空港に向かう高速道路の掲示板に「横風注意」と出ていた。記憶にある限り、初めての経験だ。今日は飛ばない方がいいだろうか・・・
 フライトプランを出してエプロンに出ても、風が強いのはわかる。だが、横風にはならないので問題はないだろう。今年の初フライトに上がることにした。

 あっという間に滑走路から脚を離す。まだ滑走を始めたばかりなのに、もう離陸速度に達しているのだ。ほとんど滑走路は必要ない。これなら、学校のグラウンドからでも離陸できるのではないだろうか(笑)。気温が低くてエンジンの効率がいいのと、向かい風が強いためである。

 上がった瞬間、快哉を叫んだ。ものすごく空気が澄んでいて視程がいい。明石大橋がくっきりと見える。機首を北へ向けただけで、比叡山がはっきり見える。日本の空でこれほど眺めがいい日は数えるほどしか経験がない。

 予定通り、雪景色を見に行くことにする。自分の操縦する飛行機から見るのは初めてだ。
 琵琶湖西岸を北上する。高島町までは平野部に雪はまったくない。ところが、隣の安曇川町は湖岸まで一面の雪景色だ。

 幸い雲も高いので、谷沿いに山越えをして西進、朽木村に入る。山頂の雪が綺麗だ。いつかは日本アルプスの山岳地帯を飛びたいのだが、今の飛行機ではたぶん無理だろう。気分だけが日本アルプスである。

 飛ぶのが億劫だった。風も気になった。だが、考えていても仕方がない。とにかく家を出るのだ。とにかく何か行動を起こすことだ。飛ぶのに限った話ではなく・・・