★最後の砦

 こういうニュースを聞くと、心底ほっとする。この国の司法は、まだかろうじて機能しているのだ。

 防衛庁の官舎の集合ポストにビラを入れただけで、逮捕・勾留・起訴された人たちに、無罪判決が出た。もちろん、これで有罪になるなら、マンションの集合ポストにビラを入れている何万人?もの人も一緒に罰しなければならない。それで初めて「法の下の平等」がかろうじて担保される。

 当然の判決とはいえ、起訴されれば有罪決定も同然(99%以上が有罪)である日本の司法制度においては、画期的といえば画期的だ。形式的にはもちろん有罪にすることができないわけではないのだから。
 裁判官には率直に敬意を表したい。まだまだ、人々の最後の砦となってくれる場合もあるのだ。

 いうまでもなく、この「事件」は最初の最初から何重にも間違っていた。逮捕するべきでもなかったし、勾留すべきでもなかったし、起訴するべきでもなかった。そのいずれの段階でも正義が機能しなかったことには、暗澹たる気持ちになる。

 無罪判決が出たとはいえ、被告たちは不当な取り調べの中で暴言を浴びせられるなどの屈辱的扱いを受け、なんと、75日間にもわたって勾留されている。実質的に、実刑判決を受けて2か月以上刑務所に入っていたのと大差ないのだ。
 警察も最悪だが、起訴した検察も最悪だ。不起訴にすれば検察への信頼を保つこともできたのに、自らその機会を葬ってしまった。この上控訴などして恥の上塗りをしないことを祈るばかりだ。

 警察にも検察にも、おそらくはまともな人はいるのだろう。いや、ほとんどがまともな人たちだと信じたい。しかし、その人たちの苦労や努力は、こういったばかげた、笑い話のような、それでいて戦前の特高警察を思い出させる異常きわまりない弾圧によって、粉々にされてしまうのだ。
 警察や検察こそ、自分たちの日々の仕事を台無しにする「同僚」に抗議や怒りの声をあげるべきだろう。

 被告たちを危険な事件に関与する過激派集団などと関連づけようとした検察の見方も判決によって否定されている。もちろん、仮に「過激派」であっても、ビラを入れた「だけ」で逮捕・勾留・起訴まですることに賛成できるわけではないが・・・

 ・・・あ、以前にも書きましたが、私は、生涯を通じて過激派とはまったく無縁だし、あらゆる政党のメンバーであったこともないし、どんな宗教にも加入したことはないので、どうか目の敵にしないでください。おねげぇーしますだ、お代官様、警察様、検察様・・・