★ヨーロッパの夏は寒い

 ギリシアやイタリア中南部はともかく、ヨーロッパの大部分は夏でも涼しい。summer だの、été だのというのは、「夏」ではないのだ。大阪で言えば、10月も終わろうかというころの気候がちょうどヨーロッパの8月の気候ではないだろうか。
 それに、日本のように7月より8月の方が暑めだというのは大方の温帯国では珍しいことだそうで、たいていは7月の方が明らかに暑いらしい。そうすると、同じ8月で比べれば、暑さがほとんどピークの日本と、だんだん秋色が濃くなってくるヨーロッパということになって、ますますその差は開く。もちろん、たとえばパリの緯度は北海道などはるかに超えて、サハリン中部と同じぐらいである。涼しくないわけがない。

 それでも、8月15日ごろまではバカンス真っ盛り。田舎では、どうかすると半ズボンに上半身裸のオッサンたちが闊歩し、とても泳げそうもない冷たい川に子どもたちがどんどん飛び込んだりしている。
 かつても見たそのイメージと、日本のどうしようもなく暑い夏。出発前には、またもや、涼しさ、まして寒さなど実感できなくなってしまっている。「寒いかもしれないから」などと口では言いながら、脳裏には裸のオッサンと川に飛び込む子どもの姿が浮かんでいて、まともな防寒対策などしない。いや、一応持っては行くのだ。それでもなお、現地で「今日は寒いかも」と思っても着なかったりする。

 8月25日。ナチスドイツからのパリ解放記念日。ちょうど60周年だ。雨模様。寒い。震え上がった。気温は12度ぐらいまでしか上がっていなかったらしい。大阪なら真冬である。さすがに上着を着ている人も多いのだが、われわれは上着を持って出なかった。なんだよこれ。まだ8月だぜ、8月・・・

 帰国すると、皆が口々に「朝夕はめっきり涼しくなってきて」という。すみません、無茶苦茶蒸し暑いんですけど・・・