◆「両肺尖部陳旧性胸膜炎」
家人の健康診断の結果が返ってきて、「両肺尖部陳旧性胸膜炎」という所見が書いてあった。
本人はまったく気にもせず、そのまま結果をうっちゃっていたのだが、その辺に置いてあったのを開けてみた私は仰天した。
なにしろ「胸膜炎」なのである(よくわからないけど)。
気になったのはそれだけではない。
両肺も尖部も胸膜炎もまあいい、だけど、陳旧性って何なのか。
そもそも、尖部陳 旧性 かもしれない。せんぶちん?
調べるとやはり、陳旧性のようだが、中型の国語辞典(広辞苑や大辞林)にも載っていない。
陳は陳腐の陳、要するに古いということらしい。何でこんな馬鹿げた医学用語をわざわざでっち上げるのか。
おどろおどろしい病名?のわりには、判定はBで「軽度異常」。「わずかな異常が見受けられますが、日常生活には差し支えありません」。
ネットで調べても、「気にせず放置」するしかないようだ。精密検査も経過観察も生活改善も必要ないらしい。それらが必要なものはCやDになる。
何もすることがなくて、気にもせず放置するのが正解なら、何のために告知しているのやら。
家人のようなノーテンキな人にはいいかもしれないが、私のような心配性の人なら、要らぬことを言われてストレスになるだけだ。
Bはもう一つあったが、家人はやはりまったく気にもしていない。羨ましい性格である。
去年までは何もなかったのは確実なので、何か思いあたることがあるはずだと話すうち、年末年始にかけてしつこい咳が続いていたのを思い出した。
あれが胸膜炎で、それが治った跡がレントゲンに写ったのかもしれない。
仮にそうだとすると、「陳旧性胸膜炎」はないよね。その伝でいけば、いわゆる盲腸が治った人は「陳旧性虫垂炎」だということになってしまう(まさかそんなふうには言わないだろうな)。
あ、切除した場合は違うか。
いずれにせよ、この件に限らず、医学用語の世界には、医学者の国語力を疑わざるを得ない事例が非常に多い。
誤解を産むような医学用語は修正していってもらいたい。