●顔のないヒトラーたち

 アウシュビッツを訪れたときのことは、以前ここに書いた

 今や、知らぬ者のいないその場所も、フランクフルト・アウシュビッツ裁判(1963-65)がなければ、今とはまったく違った様相を呈していたかもしれない。

 1950年代初頭には独仏英語に訳されていた『アンネの日記』も、ドイツや世界におけるアウシュビッツの認知にはまだ効果を発揮していなかったのだろうか。

 大袈裟ではなく、まさに全人類が見るべき映画だと思う。

 困難な捜査を遂行し、自国の罪を裁き、それを映画にする・・・ それらすべてがドイツ人自身の手によってなされたことは、救いようのないできごとにも、微かな希望の光を与えてくれる。

(Im Labyrinth des Schweigens(沈黙の迷宮の中で), 2014 Deutschland)