★滑走路から脚が離れるまで

 いちおう仕事を片付け(というか、先送りできるものは先送りし)、やっと旅行モードに入りつつある。

 これまで、「ほんとに行ける日が来るのだろうか」といういつもの感覚がずっとつきまとっていた。
 いつもと違うのは、飛行機とレンタカーを3月に予約してから5か月もの長い期間があったことである。

 病気や怪我から、火山の噴火まで、ありとあらゆる障害が旅を不可能にする。

 一番大きかったのは、複数の身近な人物に問題が生じるかもしれないということだ。
 入退院を繰り返してる老人たちは、今は幸いみんな家にいて、健康とはほど遠い状態ながらもなんとか暮らしている。

 ありがたいことだ。

 だが、今これを書いている右横にも「志村けん 入院し舞台中止に」というニュースが見える。
 まだまだ安心できない。老人たちだけではなく、私たちにだって何が起こるかわからない。
 何も起こらなくても、すでに五十肩で、ふつうに仰向けで寝ることすらできないのだ。

 大した影響があるわけではないが、今日だって、家で旅行のための書類を印刷していると、何の前触れもなく突然プリンタの電源が落ち、二度と入らなくなった。

 台風も近づいている。

 以前は、「何か急な仕事が・・・」ということにまで頭を悩ませていた。しかし、今となっては、そんなことは起こりえないと思える。
 それだけでも恵まれていると言わざるをえない。

 それでも、安心はできない。

 飛行機のチケットを購入した旅行会社からは、「毎年パスポートお忘れによりご出発」「いただけないお客様が多発しております」というメールが届いた。

 多発!

 ほんとうに、何でつまずくかわからない。

 今回は、下手をするとパスポートの切替や国外運転免許証の取得も忘れかねないところだった。
 他に何か忘れてることはないだろうな・・・ そもそも、出発日は合っているのだろうか。

 おそらく、いつものように、関西空港の滑走路から旅客機の脚が離れた瞬間に、やっと、「ほんとうに、行けるんだ」というあの安堵が訪れるに違いない。

 でも、あらゆる障害(今のところ台風がいちばん問題かも)を乗り越えてそこまでたどり着いても、ヘルシンキでの乗り継ぎ時間が40分しかないという事実がおそろしい。

 定時運行率が最高レベルのキャリアだというのだが、それでも9割くらいである。今回は、ヘルシンキの滑走路から脚が離れるまでは安心できない気がする。

 まあとにかく、何ごともなく平和に日々が過ぎてほしい。

 なにも、われわれの旅行のためだけではなく・・・