●「想定外」
嫌いな言葉がある。
「想定外」というのもその一つだ。
いつのころからか、政府や自治体、企業などの言い訳として頻用されるようになった。
もちろん、「想定はしていましたが予算の関係で対策できませんでした」と正直に言えない場合などもあるだろうから、そういうケースには同情の余地もある。
だが、だれが考えても当然想定しておくべきだろうし、対策や予防にだってコストもかからない、という時にだって使われている。
このブログでも、当然想定しておくべきことをしていなかったという人たちに苦言を呈したのは1度や2度ではない。
今思い出した中でも傑作なのは、最上川の鉄橋上で突風により列車が脱線転覆した際(2005年12月)に、JR東日本の安全運行部長!が発言した「風は一定に吹くというのがわれわれの常識」だというものだ。
「最大瞬間風速」とか「突風」とか、「つむじ風」や「竜巻」などという言葉を聞いたこともないのだろうか。
信じられないくらいに愚かなのか、それとも嘘つきなのか。
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先日、鳥見仲間と金剛山に行った。大阪府の最高地点(といっても1053m)がある山だ。
天気の心配をしていたのだが、前日までの悪天候がウソのような好天。雨男を自認する先達と一緒なのに、幸運なことだと喜んでいた。
道中、パラグライダーの経験者で、風に敏感なもう一人の連れが、「今日は風が強いですね」という。言われるまで、私はぜんぜん気づいていなかった。
なるほど、周囲を見回すと、エアコンの効いた車の中からでも、かなり強い風が吹いているのがわかる。
しかも、それこそ「一定に吹」いていないような風だ。
かつての飛行機仲間以外で空を飛ぶ話ができる知り合いは初めてなので、強風時の飛行の話題などを楽しく語り合いながら、順調に車を走らせていた。
それにしてもいい天気だ・・・
ところが、いよいよ金剛山にかかるころ、「強風のためロープウェイ運休中」という看板が目についた。
まさに「想定外」である。
ロープウェイが運休している可能性なんて、ちらっとも考えていなかった。「風が強いですね」という会話をした後でさえ。
実際、日本各地はもちろん、ヨーロッパやシンガポールや韓国なんかで何度かロープウェイに乗ったことがあるが、「強風で運休」などということは一度もなかった。
個人の経験としては。
「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」という。
いや、別に歴史なんて持ち出さなくても、風が強ければロープウェイが止まる可能性があることくらい、子どもでも想像できる。
ああ、またしても、自身の想像力のなさを思い知らされた。
まあ、危機管理とかそういう話じゃないので、別に深く考えたわけでもないし・・・と自分に言い訳をする。
結局、その日ロープウェイは一日中運休し、自力で山上まで往復する羽目になった。
途中で引き返すことになるかなあ・・・とも考えていたのだが、意外にも当初の目的地をきちんと回ることができ、鳥やその他の動植物を楽しむこともできた。
ロープウェイに乗れなかったお蔭で出会えた鳥もいた。
それはともかく・・・
私は信じられないくらいに愚かだ。たぶん嘘つきではないけれど。