◆セラミックのボカリナ

 以前にも書いたが、音楽にはほとんど縁がない。

 No Music, No Life. みたいな人も多い中、私は聞く方すら趣味とも言えないレベルだし、演奏の方はまったくダメである。

 小学生の時にはなぜか(ほんとになぜなんだかわからない)「器楽部」というのに所属していて、音階を奏でる楽器がぜんぜんできないものだから、ティンパニーを叩いたりシンバルを鳴らしたりしていた。
 それくらいなら私にも何とかなったのである(ティンパニー奏者・シンバル奏者の皆さま、申し訳ありません)。

 中学校3年の時だったと思うが、友人の影響でフォークギターなんかも買った。
 Fコードはたぶん何とかクリアした程度だったが、友人の一人が、当時の私から見ると天才とか名人とか呼ぶしかないようなクラシックギター奏者であり、また別の一人は、プロみたいにフォークソングを弾き、歌っていて、私自身は早々に挫折した。

 ろくに練習もせずに、彼我の違いを思い知らされた気になっていたのだ。
 まあだいたい、私は何をやっても続かない。
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 その時代からはるかに飛ぶが、今、リビングの隅にはただの一度も!人の手によってまともな音楽を奏でたことのない電子ピアノが鎮座して20年近くなる。
 息子が興味を示すかと思ったのだが、家族のだれも習いすらしないまま、ほとんどそこにあるだけのオブジェと化している。

 そんな私がかろうじて人並みに鳴らすことができるかもしれないのがリコーダーだ。

 小中学校の音楽の時間に否応なく吹かされたせいもあるだろうが、リコーダーなら、楽譜なんか見なくても、知っている曲はだいたい吹ける。
 それがふつうだと思っていたのだが、できない人も多いみたいなので、ひょっとしたらちょっと才能があるのかもしれない(笑)

 だが、いい年をした男が、リコーダーでは格好がつかない。

 いや、人前で演奏することなんかないのだから、もちろん格好なんかつかなくていいのだが、なぜかそういうふうに考えてしまうのである。
 たぶん、ギターのうまかった友人たちが女の子にもてているような気がして羨ましかったのがトラウマになっているのだろう。
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 バーディングの先輩に音楽好きな方々がいて、そのうちのお一人がオカリナの先生なんかをやっていらっしゃる。
 数年前、そのご縁で、オカリナを購入して吹いたりしてみた。オカリナなら、ちょっと格好がつくんじゃないかと思ったのである ^^;

 しかも、リコーダーに近いので、特に練習というほどのことはしなくても、知っている曲ならそれなりに吹けてしまう。
 もちろん、ひと様に聞かせられるようなレベルではないのだが、向上心というものを持ち合わせていないものだから、なんだかすぐに飽きてしまった。
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 今度もそうなると思う。でも、今度はちょっと違うような気もする。

 同じ先輩から、鼻笛(ノーズフルート)というものも教えていただいた。鼻から出した空気を口で共鳴させて演奏する、口笛が大きな音で出るような楽器だ。
 音階も、口笛と同じように、口の大きさや形、舌の位置なんかで作る。

 オカリナと前後して、まず木でできたのを買い、次いでプラスティックのを(当時は日本で手に入らなかったので)アメリカの eBay で購入した。

 木製のは、まろやかな低音が出たりして音色は好みなのだが、たぶん構造上の欠点があって、息の利用効率が悪く、息継ぎが大変すぎた。
 それで次に、プラスティックの(「ボカリナ」という登録商標で呼ばれている)を買ったのだが、こちらは音が気に入らなかった。

 というわけで、いつものようにお蔵入りになって数年経つ。

 そんな中、懲りもせずにまた音楽の虫が騒ぎ出し、今度はセラミックのボカリナ(第2世代)を購入した。

 今日来たばかりなのだが、こいつは木製やプラスティック製の欠点を克服したような製品で、息も苦しくならないし、音色も悪くない。

 知っている曲ならすぐに演奏できるのは口笛と同じで、リコーダーやオカリナよりもはるかに楽である。

 もちろん、上手に吹けるわけではないが、これならちょっと練習しようかという気も湧いてくる。

 さて、また同じ轍を踏んですぐにタンスの肥やしとなるか、それとも少しは上達するのか。

 いずれにしても、「鼻笛」では「格好がつかない」んだけれど・・・