★印象操作? ──ホンダジェット

 「ホンダの翼 日本の空に」という見出しで、今日(4月24日)の朝日新聞朝刊がホンダジェットの初来日を報じている。
 ホンダが製作したとはいっても、アメリカにあるホンダエアクラフトカンパニーという会社が向こうで作っている機体なので、日本に来るのは今春が初めてなのだ。

 各社報道ではそういう言い方をしていないようだが、日本が製作したジェット機が実用化されること自体、たぶん初めてのことで(もうひとつ、三菱リージョナルジェットMRJ)という旅客機があるが、まだ初飛行すら終えていない)、まずはめでたい。

 航空ファンの端くれとしては、記事が一面ではなく8面であることがちょっと拍子抜けだが、まあそれはよい。

 気になるのは、「ホンダが米国でつくった小型ジェット機ホンダジェット」が初めて日本に飛来し、23日午後、東京の羽田空港に到着した」という書き方である。

 これ、素直に読めば、おそらくほとんどの人が「日本に来るのは羽田空港が初」と思うのではないだろうか。
 ところが、実際には、その4日も前の19日に仙台空港に到着している。上記ではまるで、その事実を知らせたくないような書きぶりである。

 おそらくは、報道機関を招待してのお披露目が昨日(23日)の羽田だったのだろうと思う。
 だが、「初めて日本に飛来し」などと言いたいのなら、仙台に来たときに記事にすればいいのに、4日も遅れて、あたかも昨日来たばかりのように報道するのは、どういう意図があってのことなんだろう。

 記事を隅から隅まで読んでも、いつ来日したか、どこから羽田に来たかについては一切の言及がない。もちろん、仙台にも一言も触れていない。
 どうしてこんな、明らかに間違った印象を読者に植え付けるような記事を書くのか。
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 もう一点、気になることがあった。仙台まではいったいどうやって来たのだろうということである。

 これはまあ、記事で触れる必要はないのかもしれないが、何も考えずに素直に記事を読むと、ふつうの人はアメリカから羽田へ直接飛んできたと思うのではないだろうか。
 少なくとも、そう誤解されても仕方ないような記事になっている。

 「初飛来」というからには、分解して船で運んできたのではないだろうが、最大7人乗りだという小型ジェット機が、はるばるアメリカから太平洋を越えて渡って来られるわけがない。
 西海岸を出発したとすれば、途中ハワイに降りるとしても、ぜんぜん無理だろうと思う。

 調べてみると、ホンダジェットの航続距離は2185km(honda.co.jp)に過ぎず、たとえばサンフランシスコからホノルルまでの半分ほどしか飛べない。

 実際には、アラスカのノームから、ロシアのアナディル・マガダン・ペトロパブロフスク-カムチャツキー・ユジノ-サハリンスクの各地、さらに仙台を経由して東京羽田に来ている(flightradar24.com)。

 アラスカまでどうやって行ったのかはわからなかったが、途中、7回以上は着陸して、カムチャツカ半島とサハリン経由でようやく日本にたどり着いたのである。
 「よしよし、よくがんばったなあ」と翼をなでなでしてあげたくなるくらいの長旅だ。

 航続距離の短さ(それでもこのサイズとしては立派なものだが)には一切触れないで、「完成したホンダジェットは海外メーカー製より最高速度は1割速く、2千フィート(約600メートル)高く飛べる。室内は2割広く、燃費は17%いい」などと、「海外」と比較した自賛記事に徹している。
 パイロットへの言及もないところを見ると、おそらく日本人ではないのだろう。

 「自画自賛は危うい」と常に警鐘を鳴らしている新聞とは思えない。
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 朝日をあげつらってみたが、他はどうだろう。ネットの記事を見てみると、

「ホンダが米国でつくった小型ジェット機ホンダジェット」が初めて日本に飛来し、23日午後、東京の羽田空港に到着した」(asahi.com(新聞と同じ))
「ホンダのビジネスジェット機「ホンダジェット」が23日、日本で初披露された」(mainichi.jp
「ホンダが開発した小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」が23日、拠点の米国から羽田空港に到着し、報道陣向けに公開された」(yomiuri.co.jp)
「ホンダが発売を予定している小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」が23日、初めて羽田空港に着陸し、報道陣にお披露目された。」(sankei.com)

 うわっ。朝日が一番ひどいじゃないか。

 他のトピックに関して、こういう報道姿勢(印象操作?)を「体質」としてネットで叩かれているのを見るにつけ、同情的に眺めていたのだが、こんなことでは、批判されても仕方ないような気もしてくる。

 しっかりしてくれ。