◆てんやわんや?

 具体的に正確な表現を忘れてしまったのが悔やまれるのだが、うちの職場に新しく赴任した方が、「今、てんやわんやなんですね」という趣旨のことをおっしゃった。

 着任していくつかの会議に出た後に抱いた感想がそれである。

 「てんやわんや」「上を下への・・・」「激動の中」 うーん、思い出せない。

 ともかくも、外部から来た新鮮な目で見ると、うちの職場は今そういう状態に映るらしい。

 問題は・・・

 それが、「今」のことではないことである。

 私が着任してから、もしかすると最初の2〜3年はまだマシだったかもしれない。
 しかし、その後の十年以上は、もうずっと「今」と同じ状態が続いている。後から後から、これでもかこれでもかと。

 もうすっかりそれに慣れてしまっているので、ストレスにおかされて愚痴などはこぼしつつも、もはやそれが日常なのだが、その状態をあらためて

 「今、てんやわんやなんですね」

と言われると、やっぱりこんな状態は異常なんだと思う。

 より深刻な問題は、うちの業種に属する日本中のほとんどの職場が同じような状態なのではないかと懸念されることだ。
 いや、同業に限らない。仕事はまったく違っても、組織原理が同じような職場は日本の中枢から隅々にまであまねく広がっている。

 てんやわんやをやめるだけで、仕事の効率は最低でも1.5倍くらいにはなるだろう。

 それがわかっていても末端は無力だ。

 ・・・いや、さらに深刻なのは、どんなポジションにいてもほとんど無力だということであろう。

 どうしてこうなるのだろう?

 空気? 風? 流れ?

 たとえば丸山眞男を熱心に読んだような人がいくらでもいるのに、どうして相変わらず同じことが続いているんだろう?