■陰謀論者も真っ青

 世に「陰謀論者」と呼ばれる人たちがいる。

 典型的には、「2001年にアメリカで起きた911テロは、アメリカ自身の陰謀による自作自演だ」というようなことを大まじめに主張する人たちのことである。

 心ある人たちは、そういう人たちの存在を憂うとともに、こうした荒唐無稽な「陰謀論」が一般の人々にまで浸透しないように心を砕いている。

 「陰謀論者は論理的にものを考えられない残念な人たちであり、間違った信念に凝り固まっているので何を言っても無駄」というのが、「良識派」の共通理解であるようだ。

 しかし、陰謀論者を嗤っていられないようなことが次々と明らかになっている。

 例のエドワード・スノーデン元CIA職員の内部告発によって、アメリカがさまざまな個人情報を違法に収集していることは、もはやだれもが知るところとなった。

 いや、それだけではまだ「陰謀」の名に値しないかもしれない。

 本日(2013年9月6日)付の朝日新聞夕刊で知ったのは、NSA(アメリカ国家安全保障局)などが、インターネットの暗号化技術を解読したり無効にしたりしているということだ。
 問題は、そういう努力をしていること自体ではなく、

 「IT企業やインターネットのプロバイダーなどの協力を得て、暗号情報に侵入するための「裏口」も設けている」とか
 「NSAは設計段階から(暗号化技術に)関わり、侵入しやすいよう「弱い部分」を仕込んでいた」(丸括弧内は筆者補足)とかいう点だ。

 これはもう、陰謀論者が「それ見たことか。やはり巨大な陰謀が渦巻いているのだ」と言っても、「はい、おっしゃるとおりですね」と返事するしかないレベルの「陰謀」であろう。

 あれ!? じゃあ、真っ青になるのは、「心ある人たち」「良識派」の方であるべきですね。
 「陰謀論者」は「やっぱり」と小躍りして喜んでいるはずだ。

 でも、こういうときって、「陰謀論者も真っ青」って言いますよね?

 どうしてなんだろう?

 (念のため、少し真面目な補足:「心ある人たち」も、これくらいのことはあり得ることと考えていたと思います。「911アメリカの陰謀だ」というのとは、まったく次元の違う話です。でも、それにしても・・・)