◆1億円!

 宝くじを買ったことはほとんどない。

 自分のために購入したのは生涯でたぶん1〜2回、パーティの景品としてが2〜3回。

 だが、定期預金をすると宝くじをくれる銀行があるので、ジャンボ宝くじ系だけ、自然に手に入る。
 預金金利があんまり馬鹿げているので(0.2%とかって何かの冗談ですか?)、宝くじでもついてる方がまだいいように思えたのだ。

 当選金は自動的に口座に入るのでいつもは気にもしていないのだが(多くても合計数千円だ)、たまたま昨日、今日が当選番号の発表日だという広告を新聞で見た。

 それでもほとんど気にしてなかったのだが、今日の夕刊で当選番号が掲載されているのを目にしたので(ふだんから載っているんだろうか。見たことないような気がするんだけど、目に入ってないのかな)何となく妙な予感がして、銀行が送ってきたハガキと照合してみることにした。

 宝くじの現物はくれず、番号を記したはがきが送られてくるのだ。

 一等から見ていくが、当然、かすりもしない。だいたい、お年玉付き年賀状の切手だってほとんど当たらないんだから。

 ところが、一等の下から2番目の番号で思わず

 おおおおおぉぉぉっ!

と叫んでしまった。

 87組 1711・・

 ばっちりなのだ。信じられない。組が合うだけでも(たぶん)1/100の確率なのに、

 えええええぇぇぇっ!

 はがきに記されたのは

 87組171100 から 171109 の連番

 そして、当選番号は・・・

 87組171117

 うっそぉぉぉっ !?

 実に、8番違いなのである。もう10枚連番が続いていたら、前後賞あわせて1億1千万円の当たり。
 もちろん、当選番号が10だけ前にずれていても同じである。

 だが結局、「かすりもしない」のと結果は同じ・・・

 まるで当選したかのように叫ぶ私の向かいでは、クールな家人が

 「当たってないんやったら、何番違いでもおんなじやん」と平然としている。

 私の異様な興奮ぶりに「当たったん?」と聞いたときですら、「まだ雨降ってる?」と同じような冷静さ。
 もともと、あぶく銭なら10億だって10万円だって別に要らないという変な奴ではある(そのくせケチだ)。

 それにしても・・・

 ともに「惜しかったねぇ」と盛り上がれる伴侶が欲しいと半ば真剣に思った。
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 まだ信じられない。1億円に8番違い・・・

 1億円というのは、おそらくわたしの定年退職までの手取り収入の総計と同じくらいである。つまりは、たった8番違っていたら、今すぐにでも仕事を辞めて引退できるのだ。

 でも実際当たってたらどうしてたかなあ、引退するには微妙な金額だよなあ・・・ とか、まったく無駄なことを考えている。

 家人もまた、もう少しマシな伴侶に恵まれていたらなあ・・・ と考えていることだろうと思う。