★愚かなアメとムチ

 例年にない?冷え込みとともにボーナスシーズンが訪れた。

 受け取るのはまだ先だと思うのだが、明細だけ先にくれた。

 それによると・・・

 私の勤務成績は「優秀」だそうである。
 「良好」が標準だと書いてあって、「不良」というのは処分を受けたときにしか適用されないとどこかで読んだことがあるので、まあ満足すべきなのだろう。

 だが、これまで「良好」だったのは1〜2回で、それ以外はずっと「優秀」だったと記憶している。しかも、どちらの評価にもまったく身に覚えがない。
 あ、確か、一度珍しく表彰を受けたときの評価が「良好」で、「何で?」と思ったことはある。

 おそらく、実質的にはむしろ「優秀」が標準で、たまに「良好」になるのではないか。しかもたぶん、順番に回しているのだ。今回はABCDさんは優秀で、EFさんは良好、次回はCDEFさんが優秀で、ABさんは良好・・・とかいうふうに。

 第一、だれがどこでどんなふうに評価をしているのかまったく不明である。仕事ぶりなんかほとんどだれも見ていないし、もしほんとうに見ているとすれば、私の評価は常に「不良」ということになろう(あ、処分されるようなことはしていないから「良好」か)。
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 それはいい。
 そもそも、評価なんかがボーナスの明細に表示されだしたのはここ数年のことである。

 やる気を引き出すためのつもりなのだろうが、たぶん何の役にも立っていない。

 そのことに気づいたからだろう、今回初めて、実は3段階ではなく、5段階評価であったことが示されていた。
 これまで私が見たこともない「非常に優秀」「極めて優秀」という評価が、「優秀」の上にあったのだ(あるいは今回からできたのか?)。
 なるほど、目立つほどの業績が上がれば、たしかにそういう評価をするのは悪くないかもしれない。

 げんなりしたのは、「優秀」と「良好」との評価の差額が5万円ほどあるということを告げる表記が新たに付け加えられたことだ。

 つまり、あなたは評価が「優秀」だったので、標準的である「良好」を取った場合よりも5万円ほど賞与が多いのですよと、恩着せがましく書いてあるのである。

 そんなことで仕事のモーティベーションが上がると、本気で考えているのだろうか?

 私ならむしろ下がる。いや、多くの人が下がるのではないか。
 お金は確かにありがたい。だが、働きぶりの違いで5万円の差が出ると伝えることが、やる気やプライドを引き出せるとは到底思えないのだ。

 そういうものに満ちた人は、そもそもそんな差など気にしないか、わずか5万円の差なのかと落胆するかだろう。
 そういうもののない人も、そもそもそんな差など気にしないか、わずか5万円の差なら楽した方が・・・と思うだろう。

 ふつうの人(たぶん私はそうだと思うのだが)は、

 そういう情報を与えられることでもっと働くようになると思われているなんて、馬鹿にされているとしか思えない・・・と考えるのではないか。

 小手先のアメとムチで人のやる気を引き出せるというような考えの人物が、われわれが働いているような組織のトップ(に近い位置)にいるなんて、なんだか絶望的な気分にさせられる。
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 「良好」より5万円ほど多いんですよと言われている私のボーナス(手取り)は、20代!の時に別の職場でもらっていた金額の2/3ほどである。年齢は倍近くになっているのに。

 だが、金額に大きな不満はない。

 不満があるのは、こざかしい策を弄せば人を動機付けられると思っているような、愚かな連中の下で働かせられていることに対してだ。
 (念のため、現在の直属の上司はいい方(かた)です。こんなシステムになっているのはもちろん彼女のせいではありません。)