■陸路の国境越え

 今回の旅行では、つごう8回国境を越えたことになる(ドバイを除く)。

 だが、空港での出入国を除く6回の陸路のうち、国境らしい国境はスロベニアからクロアチアに入るときだけだった。

 スロベニアはシェンゲン条約加盟国で通貨までユーロなのに、隣国のクロアチアはEUにすら入っていない。
 ルーマニアブルガリアはもちろんのこと、元ソ連であるエストニアラトビアリトアニアバルト三国ですらEUには入っているというのに。

 というわけで、スロベニアからクロアチアに行くときには懐かしい陸路の国境があった。

 パスポートを準備して係官に手渡し、返してもらって特に問題なく進む。
 さあ、クロアチアに入ったと思ってしばらく走ると、またパスポートを見せろと言われる。「え? 何で? さっき見せたんだけど」と思ったのだが、口に出さなくてよかった。
 いったんしまい込んだパスポートを引っ張り出してまた手渡す。

 あたりまえのことだが、一回目はスロベニア出国、二回目はクロアチア入国である。

 日本から外国に行くときは、一回目の出国を日本の空港で行い、数時間から十数時間のフライトを経てから二回目の入国を行う。それに慣れてしまっているので、その2回を1〜2分ほどの間隔で行うことに戸惑ったのだ。
 (クロアチアからハンガリーに入るときも一度だけパスポートを見せたのだが、どちらの国に対して提示したのかすら把握していない ^^;)

 思えば、初めてヨーロッパへ行った1983年には、国境を越えるたびにこれをやっていた。もちろん、一応は検疫も税関もあった。
 それがいまや、大陸側のほとんどの国では出入国管理がなくなってしまっている。

 ミシュランの地図によると、あの孤高のスイスですら、今やシェンゲン条約加盟国で、パスポートコントロールはなくなっているという。
 調べてみると、2008年の終わりから陸路で、2009年春からは空路でも、加盟国間の移動の際、パスポート提示は不要になったという。
 これにはちょっと驚いた。もちろん、まだ?EUには加盟していない。

 にもかかわらず、旧ユーゴスラビア諸国のうち、EU・ユーロ・シェンゲンと3拍子揃ったスロベニアを除くと、他のすべての国は、そのいずれもがまだである。

 なぜ、ひとりスロベニアだけが完全な仲間で、他は完全な他人なのか。

 そんなことも、今回の旅行に行くまで、思いつきもしなかった。