●Occupy Sydney ?

 オーストラリア最終日、夕方6時過ぎ、シドニーのハイドパークを歩いてタウンセントラルに向かっていると、やたらに警官が集まっているのに出くわした。
 ベンチに座って出入国の書類なんかを書いていたところ、そのうちぞろぞろ移動を始めたので、何があるのかと近くにいた女性警官に聞いてみた。「プロテスト」があるから警備しているのだという答えだった。今思ったが、「抗議活動」とでも訳すのだろうか。

 この恵まれた国でも、そういうこともあるのだ。

 後をついていくと、ちょうど事態が緊迫してきたところで(だから警官がみんな現場へ移動したのだろう)、人垣の中のだれかを外に引きずり出そうとする警官と、それに抗議の声を上げて取り囲む人たち、その様子をビデオや写真に撮ろうとする観光客たちで、ちょっとした騒ぎになっていた。
 報道機関に所属しているらしき人も数人いた。

 覗いてみると、どうも、テントを張っている女性を強制排除したかったらしい。

Dsc00935_169 テントが壊され、支柱が私の前に転がってきたりはしたが、実力行使はしたものの、逮捕とかそういうことにはならなかったようだ。

 諦めて静かになるプロテストの人たちと、15m ぐらい距離を置いてずらっと並ぶ警官が、(にらみあいではなく)まあただそこにいるだけという感じになってきた。

 騒ぎが落ち着いたので、見ていた人に「ここでやっているのは、ニューヨークのウォール街なんかでやっているあの活動の一環なのか」と聞くと、「そうだ、Occupy Sydney ! さ」と景気よさそうに教えてくれた。
 野次馬ではなくて当事者だったのかもしれない。

 その後、警官に、「どうしてあの女性を引きずり出そうとしていたのか」と聞くと、See you later. といわれてしまった。どうやら「向こうへ行け」という意味らしい。質問していいかと聞くといいと言ったくせに。
 単なる疑問だったのだが、抗議されたとでも思ったのだろうか。

 状況が飲み込めなくてもやもやするので、ちょうどタバコの吸い殻を捨てにゴミ箱に近づいて来た、気のよさそうな若い男に聞いてみることにした。胸に We're the 99% と書かれたTシャツを着ているところを見ると当事者なのだろう。
 ほとんどフィルターしか残っていないタバコを、わざわざ警官の垣根を越えて捨てに来るあたり、話のできる男ではないかと思ったのだ。それとも、吸い殻をその辺に捨てたりすると、それを口実にされて捕まったりするのだろうか。

 教えてくれたところによると、例の運動の一環としてシドニーをデモしてこのハイドパークに到着、ウォール街のようにここで夜を明かそうと思っていたのだが、女性がテントを張ったところ、それが公園の規則(キャンプ禁止)に違反するということで強制排除されたということだった。
 夜通しここにいる予定が、どうも警官がそれを許しそうにないので、これからどうするか考えているのだそうだ。

 友達が京都で(英語を?)教えているとかいうので、そこそこ恵まれた大学(院)生ではないかという気がした。まあ、それでも99%には違いないだろうけれど。
 写真を撮ってもいいかというと、満面の笑顔でピースサインをしてくれた。
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 Occupy Sydney ! (シドニーを占拠せよ or シドニーを埋め尽くせ)というと威勢はいいが、騒ぎが収まって野次馬が遠巻きになると、集まっているのはせいぜい30人足らずではないかと見えた(数えてみればよかった)。
 野次馬だって警官だって同じような数だ。ぜんぶで100人ぐらいか。

 抗議している当事者たちは、広大なハイドパークの隅にぽつんと集まったバードウォッチャーぐらいに見える。

 この人数では、シドニーどころか公園の噴水広場すら埋められない。これが、現在のヨーロッパやアメリカよりは格段に恵まれている国の姿であるとすれば、幸せなことなのではないかと思った(当事者たち個々の深刻さは別にして、ということです。もちろん)

 運動するのがいかにも遅すぎるし、ぜんぜん盛り上がっていないし。

 さて、日本はどうなのだろうか。やっているけど(ほとんど?)報道されないのかな。