■ヒトとタカと、どちらが多いか

 9月23日、朝5時半過ぎに宿を出る。やっと晴れ渡って、乗鞍岳が綺麗だ。

 6時に白樺峠の駐車場に着く。
 一昨日、人っ子ひとり、車一台いなかった駐車場がすでに満車。今後どうなるのかと思ったが、奈川側の広い駐車場にはまだ一台しか車がおらず、私で2台目。出発の準備をするうちに3台目となるプリウスが入ってきた。

 タカ見の広場までの上りで、息があがって何度も休憩する。私よりもっと苦しそうな男性と、その奧さんらしきカップルがいた。
 山岳救助マンガ『岳』を読んだところだし、ちゃんと歩けるようにならなければと思う。奧さんに置いていかれるあの男性も、同じ気持ちだったのではないか。

 3台目のプリウスの人とも一緒になり、前の方がいいと教えてもらって場所を探す。そういいながら、ご本人はどこかへ消えてしまった(が、あとで3度ほど、わざわざ私のところまで話しかけに来てくれた)。
 前の方はもう埋まりかけていたが、幸い、ひとり分だけ特等席が空いているのを見つけ、そこに決める。ベンチはない場所だが、丸太が椅子代わりに立てて置いてあった。

 早朝から人が多いのに驚いた。隣の方に聞くと、タカが飛び出すのは早くても8時だという。「ではなぜみなさん、5時半とかに来るんですか」と聞くと、主に場所取りが目的だとのこと。
 もっとも、あとで別の人に聞いたところによれば、暗くて写真の撮れない払暁あたりから飛び始めることもあるという。

 とにかく驚いたのは、見物人の装備。俗に大砲レンズと呼ばれている、大口径の600ミリとか800ミリとかのレンズを構えている人がほとんど。レンズだけで100万円とかするアレだが、ほんとに「ほとんど」なのである。

 フィールドスコープや EOS Kiss の250ミリなど、恥ずかしくてリュックから取り出せないような雰囲気である。

 一番驚いたのは、コーワの双眼望遠鏡の横にライカの双眼鏡をつけた二刀流の三脚を見たこと。双眼鏡の方を照準器として使っているのだろうか。双眼望遠鏡だけで6kgを超える重さだ。
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 正午過ぎ、観察を終えて下に降りると、道の両側まで車でいっぱいだった。もちろん、奈川側の駐車場にもぎっしり。

 ざっと数えてみると、250台ほど。少なくとも300人ぐらいがタカ見物をしていることになる。こんなところにこれだけの車が駐まっていると、何も知らずに(私だって数年前まで知らなかった)通りがかった人は、いったい何ごとかと驚くのではないだろうか。

 雨の平日と晴れの3連休初日を比べても意味はないが、それにしても、あまりといえばあまりの違いである。

 たぶん、今日はもっとすごいことになっているだろう。