◆想像力の欠如

 想像力の欠如というか何というか、どなたかから教えていただいたり実際に体験したりするまで、ごく当たり前のことでも思い至らないことに、われながら啞然とすることが多くあります。

 最近の例でいうと・・・
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 2週続けて、テラスで食事をする機会がありました。その時にどんなことに困る可能性があるか、想像できますか。
 家人に聞いてもかなり考えて思いつかなかったのですが、それは、「風でものが飛ぶ」ということです。ほとんどそよ風程度しか吹いていなくても、紙のナプキンなんかが飛ばされます。そして、実際に飛ばされるまでその可能性に気づかない・・・
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 iPad であちこちの傾斜を測るのに凝っています。わかったのは、ほとんどの建物が 0.5 度程度は傾いているということ。
 ですが、iPad 自体の精度がどの程度のものなのかがわかりません。きちんとした水平のところに当ててみて、0.0度を表示するかどうか確認したいのですが、その方法を思いつきません。皆さんは思いつきますか? いわば、「水平原器」が必要になるのですが・・・

 今日、田んぼは水平でなければならないということを教えていただいて、はたと気づきました。
 あの広い田んぼは、端から端まで水平でないと、たとえば低いところにある苗は水没し、高いところにある苗は干上がってしまうというのです。あの広さでレベルを取るというのは大変なことだと思いますが、すべて?の田んぼでそれがなされています。今までまともに考えたこともありませんでした。
 私の計算が合っていれば、0.1度傾いていると、50メートル先では約9センチの高低差ができてしまいます。0.5度だと、なんと約44センチ。

 そう、何でもいいから容器に水を張れば、それが水平原器になるのです。お風呂なんかいいでしょう。
 問題はその上に iPad を置けないことですが、サランラップを巻いてそうっと水面に合わせてみるという方法を教えていただきました。近いうちにやってみようと思います。

 でも、水平原器代わりになる固体のものはどこかにないでしょうか?
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 以下は自分のことではありませんが・・・

 福島第一原発の非常用ディーゼル発電機が地下にあったのはなぜだかご存じでしょうか。津波が来て水没する可能性は十分予想できたというのに。
 なんと、建設したアメリカの電機メーカー、GE(ゼネラル・エレクトリック)の設計をそのまま変更せずに踏襲したからだそうです(朝日新聞)。一号機に関して東電がやったことは、GEに作ってもらった原発の始動キーをひねっただけとすら言われているようです。
 ではなぜ、GEの原発は、非常用ディーゼル発電機を地下に作ったか。それは、しばしばアメリカを襲うハリケーンや竜巻から守るためだそうです。オクラホマあたりの住宅には竜巻から身を守る地下シェルターがあるのがふつうですが、あの発想ですね。それをそのまま、地震津波の日本の太平洋岸に持ってきた・・・
 あまりにも想像力が欠如しています。

 最後に・・・

 福島第一原発の所長が「震災直後は地震のことで頭がいっぱいだった。津波のことまで考えが及ばなかった」と話したそうです(nikkei.com)。

 「地震が来れば津波に警戒」というのは、関西に住むわれわれでさえ常識に属することなのですが、東北の太平洋に面する原発の責任者がそんなことも想像できなかったというのは、恐るべきことです。第一、「地震津波」を想定した訓練などをまったくやってこなかったのでしょうか。

 しかしまあ、人間の想像力ってその程度のことも思いつかないというのは、我が身を振り返ってみればわからないでもありません。
 所長個人を責める気にはなれませんが、結果の重大さを思うとき、もし組織や人間がその程度の限界を有しているならば、こういう破滅的な影響をもたらしうるシステムの運営は避けた方がいいのではないかと思えます。
 たとえ津波のことを思いついていても結果は同じであったとしても。