■バックするサギ

 宮城県石巻市あたりを北上川に沿って北上していたころのことだと思う(読み直してから気づきましたがシャレではありません)

 目の前を奇妙な鳥が左から右へ水平に飛んでいるのが目に入った。確か、長くて黄色い嘴が見えたと記憶しているのだが定かではない。
 大きさと色からは白鷺としか考えられないのだが、どう見ても知っている鳥ではない。嘴も異様だし、羽が前進翼になっているのだ。近未来戦闘機とか着陸(着水)直前の鳥とかだったらともかく、こんな飛行姿をしている鳥は見たことがない。

 驚いて見守るうち、この鳥は右から左へ飛ぼうとして、風に押し戻されているのだということがわかった。嘴に見えた足が黄色かったとすれば、コサギだろう。

 ものすごく風の強い日で、さすがに瓦礫が飛ぶのには遭遇しなかったものの、砂埃なんかはひどかった。

 それにしても、鳥が一生懸命に?飛んで、対地速度がマイナスになるなんて・・・

 これまで、風に煽られたりする鳥や風を利用して空中停止する鳥を見たことは少なくないが、真っ直ぐバックしていく鳥を見たのは初めてである。
 しばらくすると、鳥は何とか気を取り直したように、煽られながらもゆっくりと前進・降下し始めた。脳みそのない頭で、それまで何を考えて正面から風に挑んでいたのかはわからない。
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 数日の後、今度は日本海側を南下していて、たまたま直飛するカルガモと併走することがあった。ほぼ真横の低い位置をキープして飛んでいる。速度計を見ると60km/h弱。その時の風がどうなっていたのかわからないが、その後車を降りて蕎麦を食べたときの記憶からすると、穏やかな日であった。仮に無風だったとすると、秒速16mほど。
 やっぱりカモって結構速いんだなあと思った。
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 コサギの飛行巡航速度(対気速度)がいくらかわからないが、仮にカモの2/3の40km/hぐらいだとすると(経験的にはそう外していないと思う)、秒速11mあまり。つまり、それ以上の向かい風に正面から挑んでいくと、バックすることになる。
 あのときは20m近い風が吹いていたのではないかと思うので、時速30kmぐらいでバックしていた可能性もあり、だとすればちょうど鳥がふつうに飛んでいるように見えたとしても不思議ではない。

 それにしても、珍しいものを見せてもらった。

 この後しばらくして、もっと珍しい?体験をすることになる。